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2017/07/05 (Wed) フォロウィング

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原題    Following
公開    1998年
上映時間 70分
製作国  イギリス

監督   クリストファー・ノーラン
脚本   クリストファー・ノーラン

出演   ジェレミー・セオボルド
     アレックス・ハウ
     ルーシー・ラッセル


あらすじ
 ビルと名乗る作家志望の男は、職もなく、日々やることといえば興味を抱いた人間を尾行する変わった趣味であった。だがある日、尾行相手に決めた男に尾行がバレてしまう。その男はコッブと名乗り、空き巣を生業としていた。言われるがまま、彼の仕事についていくことにしたビルは、次第にある事件の渦中に飲み込まれていく。





鑑賞日  17年7月5日
鑑賞方法 DVD
評価    3.5点


レビュー
 前回のレビューからほぼ2年ぶりのレビューです。その間、数々の名作映画に出会い、また一段と映画のことが好きになりました。私自身、2年の間にたくさんの出来事がありましたが、その話はこのブログの趣旨と異なるので割愛させていただきます。もし機会があれば、レビューを書き逃している映画も含め、再度レビューをしていけたらなと思っています。限られた時間の中、なかなか難しいことだとは思いますが、自分の成長とともに印象が変わっていくところも映画の醍醐味であるかと思うので、努力して参ります。

 さて早速その復帰一つ目のレビューとなるのは、新作『ダンケルク』の公開が控えるクリストファー・ノーラン監督の処女作である『フォロウィング』。今でこそ、彼の持ち味はIMAXフィルムでの撮影で代表されるような壮大な作風ですが、ダークナイトシリーズを監督する以前の初期の頃はエッジの効いたクールな雰囲気が前面に出ていました。その中でも今作は、40年代〜50年代に多く作られたフィルム・ノワールの影響を色濃く残しておりますが、次作『メメント』と同様の複雑な時系列で語られるストーリーが新鮮さも感じさせる、文字通り彼の原点となる作品です。

 時系列が前後する、といっても決して複雑な話ではなく、逆に順序良く編集されていたら、なんてことはないサスペンスになっていたでしょう。常に受け身の主人公が、怪しげな人物に誘われ、金髪美女の住まう闇の世界へ足を踏み入れる。もし「ヒッチコック流サスペンス映画の作り方」という教科書でもあれば、その模範例として掲載されているに違いありません。
 しかしながら、今や名監督として名高いノーランの手にかかれば、ひと味もふた味も違うスリリングな映画に仕上がってしまう。もちろん、現代風のスタイリッシュなオープニングや不十分なライティングが白黒の画面に陰影を持たせている点など挙げるべき箇所はたくさんあります。ですが、何より重要なのは登場人物たちに見え隠れする「闇」でしょう。先ほど「受け身の主人公」と書いたばかりですが、この男も一筋縄ではいかない人間です。彼の独白から物語はスタートし、小説家志望だから人間に興味があってなんとなく尾行を始めた、と彼は説明します。この彼の奇妙な習性が小説家志望という説明だけで成り立つものではないことは明白ですが、人の生活を垣間見る意味を語る彼には不思議と説得力があるのです。観客の共感を呼ぶ、一般人とさほど違わない各キャラクターに潜む異常性は、この映画の中では表立っては描かれませんが、常に見え隠れしています。それこそこの映画のユニークな点、従来のフィルム・ノワールそのものではなく、ネオ・ノワールと位置付けられる理由の一つでしょう。短い上映時間もまた、その不穏な雰囲気を盛り上げるのに一役買っており、十分な説明をあえてしないことでプロットの奥行きを見せています。
 だからこそ、逆に言えば最後の展開には物足りなさも感じてしまいました。結末に触れてしまうので詳しくは書きませんが、上記にも書いた通り、結局のところ筋立て自体は「模範例」そのものなのです。登場人物の異常性はエッセンスに過ぎず、何も根幹に関わってくるわけではありません。同じようにフィルム・ノワールの系譜に連なるポランスキーの『チャイナタウン』が持つヒリヒリする感情や、より見事なひねりが加えられたブライアン・シンガーの『ユージュアル・サスペクツ』の感服するような驚きを与えてくれるわけではないのです。
 
 でも忘れてはならないのは、この映画がわずか6000ドルで作られた事実。この映画の最も価値のあることは、ドル箱監督になるクリストファー・ノーランの存在を、たったそれだけのコストで映画界に知らしめたことかもしれません。

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2015/07/26 (Sun) 時をかける少女

時をかける少女


英題   The Girl Who Leapt Through Time
公開   2006年
上映時間 98分
製作国  日本

監督   細田守
脚本   奥寺佐渡子

声の出演 仲里依紗
     石田卓也
     板倉光隆


あらすじ
 紺野真琴は東京の下町に住む17歳の女子高生。ある日当番だった彼女は、理科室に行った際に謎の人物を見かけて転倒してしまう。それがきっかけとなりタイムリープの能力を身につけた真琴は、自分の生活が上手くいくように時間を巻き戻すようになった。そんな中、彼女には2人の男友達、間宮千昭と津田功介がいたが、彼女が能力を使うたびに彼らの関係は次第にギクシャクしていき…。




鑑賞日  7月24日
場所   家
評価   3.5点


レビュー
 幾度となく映像化され、その度に新装版が出る元祖ヤングアダルト小説のアニメ化作品である。ある一定以上の年代にとっては大林宣彦の手による尾道三部作の方が馴染み深いかもしれないが、2000年代以降の者からすれば「時かけ」といえばこちらだろう。昨今の細田守崇拝の始まりとも言える。

 さて、小説のアニメ化、と一口に言ったが、厳密に言うとこの映画はその続編と言える代物だ。主人公の紺野真琴は原作の主人公芳山和子の姪であり、「女子高生がタイムリープを繰り返す」という点以外はまったく異なると言えるだろう。原作を読んでしまった人間にとっては、この改変点を受け入れられるかどうかが重要となるかもしれない。例えばタイムリープのきっかけ。原作ではあの有名な「ラベンダーの香り」がきっかけとなるが、ここではくるみの形をした装置を押しつぶしたことによる。後者の方がSFとしてはより具体性の高いものにはなっているが、淡い青春映画を彩るアイテムとしては前者の方が優秀ではないだろうか。
 だが、別物として割り切ってしまえば、はっきり言って些細な問題だろう。むしろ下手に原作そのまま原題に設定を置き換えたりせず、原作の設定をほのかににおわせたり、不必要な説明を省略している点は好感が持てる。

 しかしながら、そもそもひとつの映画として好感が持てない点がこの映画にはたくさんある。
 その一つが主人公。はっきり言って、序盤はかなり苛立たされた。中途半端な不器用さや、大げさなセリフの一つ一つが癪に障る。高校生の恋愛をなまじ上手く描けられているせいか、その繊細さと彼女の「いかにもアニメな」言動がかなり不釣り合いなのだ。それが高校生特有の未熟さと相まって、イライラすること間違い無しである。
 もう一つは、登場人物の生活感の無さ。「青春の1ページを切り取った〜」などと形容されることがあるが、恋愛にフィーチャーしたためにこの映画は本当にそこだけしか切り取っていない。医者の息子だのなんだの、キャラクターのバックグラウンドは口頭で語られるが、それが生かされることはなく、むしろ空虚さを浮き彫りにしている。物語の鍵を握る人物と同じぐらい、全員が謎めいている。だから彼らの世界が学校とその周辺にしか存在していないような気分にさせられてしまうのだ。

 他にも細かな不満点はたくさんある。しかし、それを凌駕する素晴らしい部分をこの映画は数多く持っているのも事実だ。
 先ほど挙げた欠点と矛盾するかのようだが、実を言うと、真琴の未熟さはこの映画を魅力的にもしている。下らない理由のために能力を使いまくる。男友達との関係性を、恋愛という異質な感情で邪魔されたくないがゆえに空回りする。自分の身勝手さゆえに傷ついた人を見て、後悔し、またやり直し、また失敗する。目の前のことに必死になるあまり、全体像を顧みることができないのだ。そして、どれも高校生にとってはとてもリアルな感情ではないだろうか。
 特に終盤のシーンはそれらのピークだ。後戻りできずに一度は挫折しかけるも、一筋の希望を見出し、ただ駆け出す。その真琴のがむしゃらさが、観客の胸を打たないわけがない。タイムリープするたびに、助走し、ジャンプするのは、ただただ馬鹿げたシーンを作り上げたかっただけではないのである。
 そして別れの場面。あまりにもクサイ演出、と言えなくもないが、それを口に出すのは野暮だろう。ここでも原作と大きく異なる変更点があるが、その選択はここでは吉と出たようだ。

 荒削りだが、ひたむきで、感動させられる。主人公の真琴自体が、映画「時をかける少女」の化身なのだ。

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2015/07/25 (Sat) リーサル・ウェポン

リーサル・ウェポン


原題   Lethal Weapon
公開   1987年
上映時間 110分
製作国  アメリカ

監督   リチャード・ドナー
脚本   シェーン・ブラック

出演   メル・ギブソン
     ダニー・グローヴァー
     ゲイリー・ビジー


あらすじ
 ロサンゼルスの高層マンションからある一人の娼婦が飛び降りた。ロス市警のベテランであり、50歳の誕生日を迎えたばかりのロジャー・マータフ部長刑事は、その娼婦がベトナム戦争の同僚の娘であることを知る。そんな彼に助っ人として、麻薬課からマーティン・リッグスという刑事がやってくる。粗野で自殺願望を持つリッグスに振り回されながらも、2人は徐々に絆を深め、事件の真相を追い求める。




鑑賞日  7月24日
場所   家
評価   3.5点


レビュー
 同じ監督と出演陣で続編が3つも作られた、80年代後半から90年代を代表するアクション映画である。予告編から見てわかる通りのゴリゴリの80年代感が、今となってはなんとも言えない郷愁すらも生み出している。

 だが、内容はけっして時代錯誤なノリではない。アクション、コメディ、ドラマ部分それぞれの要素が程よくミックスされていて、テンポのいい脚本がそれらと見事にマッチしている。バディ物としても優秀で、序盤のシーンからリッグスとマータフという好対照の刑事をさっと紹介し、対立から和解(といってもシリアスなものではないが)までを中だるみなく描けている。彼らを同じ世代の人間にしなかったのもいい選択だと言える。愛情を失い、若さゆえに乱暴な手段で事件を解決しようとするリッグス。反対に家族に恵まれ、ネクタイの染みすらも気にする真面目なマータフ。本編がどうであれ、彼らの掛け合いを見ているだけでも愉快な気分に浸ることができる。

 しかし、良くも悪くもプロットの精密さには欠けている。初めの娼婦が飛び降りた理由も割と適当に流し、事件に関係のある人物は御構い無しに死んでいく。後半からはとにかく怒涛の爆発、銃撃の連続だ。痛快だが、ふとした時に「あの話はどこにいったんだろう」という気持ちにさせられることは請け合いである。(特に最後の場面はツッコまずにはいられないだろう。)
 敵にあまり魅力を感じないのも難点だろう。将軍と呼ばれる本作での親玉は、あるシーンでは狂気をほんのりと漂わせるがその後はただの卑怯者に格下げされている。その右腕であるジョシュアという男は金髪の白人という「いかにも」なスタイルでリッグスたちを圧倒するが、強さそのものは比較的現実的なレベルに留まっていて、観客を畏怖させるような存在ではない。脚本はぶっ飛んでいるのだから、倒すべき存在ももう少し現実離れしていても良かったのではないだろうか。

 まあ、見ている間はそんなことを気にする必要はない。(リアルな意味で)暴力男の片鱗を見せつつあるメル・ギブソンの狂気に満ちた眼光もさながら、ダニー・グローヴァーの地に足のついた演技も妙な渋みを映画に加えている。彼らの見事なコンボさえあれば、何も怖い物はない。まさに、この映画自体が、敵を寄せ付けない最強のシリーズ物になるきっかけとなったのである。

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2015/01/16 (Fri) グリース

グリース


原題   Grease
公開   1978年
上映時間 110分
製作国  アメリカ

監督   ランダル・クレイザー
脚本   ブロント・ウッダード/アラン・カー

出演   ジョン・トラボルタ
     オリビア・ニュートン=ジョン
     ストッカード・チャニング


あらすじ
 夏休みの旅行先で出会った高校生のダニーとサンディは一目で恋に落ちるが、夏が終わると同時に別れなければならなかった。しかしダニーの通う高校に、当のサンディが転校してくることになった。ダニーを思い続けていたサンディは突然の再会に喜ぶが、実はダニーは学校でも有名な不良グループのリーダーであった。仲間の前ではカッコ悪い真似はできないと思い、ついついダニーはサンディに失礼な態度をとってしまう。それに怒ったサンディは•••。




鑑賞日  1月16日
場所   家
評価   3.5点


レビュー
 「サタデー・ナイト・フィーバー」と共に、ジョン・トラボルタの絶世期を代表する言わずと知れた名作である。50年代という、半世紀以上も前の時代を描いたこの作品を現在の視点から見るとどうであるのか。

 まず言わなければならないのは、全体としてダサいことは否めない、ということである。序盤において、友人に名前を呼ばれたジョン・トラボルタが振り返り、不敵な笑みを浮かべる時点で笑いを禁じ得ない。それどころか、全体として不良たちのテンションは異常に高く、時として観客がついていけないぐらいだ。そこが欠点でもあるのだが、ある意味でこの映画の最大の武器でもある。
 例えばストーリーだが、そのような雰囲気が全体を包み込むおかげで、限りなく大味であり、サイドストーリーはあれど、次の瞬間には全てが解決している。それが主演2人以外の深みに欠けるキャラクターたちを余計に空回りさせているのだ(妊娠騒動など良い典型だろう)。しかし、それが逆に「グリース」を最高に楽しいミュージカルにしているとも言える。70年代から見た50年代とは、映画製作時に大人であった人間たちの青春時代でもあり、何も考えずに友人たちと騒ぐことができた日々への郷愁とも取れるのだ。だからこそ、深いことを考えずにひたすらその瞬間を楽しもうとする登場人物たちが不思議と魅力的に映るのである。

 ただ、そのストーリーの枠組みをしっかりと支えているのは、間違いなく主演のジョン・トラボルタとオリビア・ニュートン=ジョンの2人であろう。トラボルタは相変わらずキレのいいダンスを披露してくれるし、ニュートン=ジョンは透き通るような歌声を聴かせてくれる。
 そんな2人がジレンマを抱えながらも、少しずつ歩み寄っていく様がなんとも愉快である。達者な彼らの演技があるからこそ、不良の男子が優等生の女の子と恋をするという典型的なラブストーリーがちっとも陳腐に思えないのだ。
 そんな彼らの思いをのせた数々のナンバーも、一度聞いたら忘れられない曲ばかりだ。言葉にならない思いを、あえて大げさな歌にしてしまうという、ミュージカルの特性も見事に生かしている。それが繊細な心の不良や、お堅い自分に不満を持つ優等生を親しみやすく、誰もが好感を持つキャラクターに仕上げているのだ。

 馬鹿らしい部分も多くあるが、見終わった後に幸せな気持ちでいっぱいになることは請負だ。最後にはダサいと思っていた彼らの姿に憧れてしまう自分がいるのである。

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2014/12/28 (Sun) ベイマックス

ベイマックス


原題   Big Hero 6
公開   2014年
上映時間 102分
製作国  アメリカ

監督   ドン・ホール/クリス・ウィリアムズ
脚本   ロバート・L・ベアード/ダン・ガーソン/ジョーダン・ロバーツ

声の出演 ライアン・ポッター
     スコット・アツィット
     ダニエル・ヘニー


あらすじ
 最先端の技術が集う都市サンフランソウキョウに暮らす14歳の天才少年ヒロ。違法であるロボット格闘技に夢中になっていたヒロの身を案じた兄のタダシは、自身の通う大学にヒロを連れて行く。タダシの研究仲間やロボット工学の第一人者キャラハン教授と出会い感銘を受けたヒロは、大学で最先端の科学を学ぶことを決意。しかし、そんな矢先、不慮の事故でタダシは帰らぬ人となってしまい、ヒロは殻に閉じこもってしまう。そんな彼の前に、タダシが生前に開発したケアロボットのベイマックスが現れ、そのおかげでヒロは少しずつ元気を取り戻していく。そして、兄の死の裏に巨悪が潜んでいることに気付いたヒロは、兄のためにも戦おうと立ち上がるが……。




鑑賞日  12月26日
場所   映画館
評価   3.5点


レビュー
 ディズニーがマーベルを買収してから考えられてきた原作付きヒーロー物のアニメである。元々のビッグ・ヒーロー・シックスとは大幅に違うものになっているが、メンバーの個々の能力は原作から着想を得たものなので、それはそれで楽しめる。

 その点について語り出すとキリがないので省略するが、それはさておき、この作品はディズニーらしく「元からある素材をうまく調理して、誰もが好む『感動モノ』に収束させる」ことには成功している。ヒロとタダシという兄弟の関係、ヒロとベイマックスという人間とロボットの関係。どちらの話も中途半端さは感じられず、きちんと整理をし、それぞれの話に一定の決着はつけている。
 しかし、その「決着」のつけ方が問題なのだ。物語の序盤でタダシが亡くなってから弟のヒロは塞ぎ込むのだが、そんな彼に対してベイマックスは「タダシはここにいます」と語りかける。(これ自体がちょっとした伏線になっているのだが、)それでもヒロは「みんなはそう言うけれど」と優しさを跳ね返す。ここに今までのアニメにはない成長を感じた。子供向けのアニメで死という決別を描く際、「故人は私たちの中に生きている」という陳腐な理論を展開しがちなのにはうんざりしていたからだ。とはいえ、考え方そのものが悪いと言っているわけではなく、それを道徳の材料として使い回す点が安直であると言いたいだけである。その点、「ベイマックス」は今までとは真逆の新機軸を打ち出しているかのように思えたのだ。
 だが期待はあっさり裏切られた。結局のところ、ディズニーは観客の涙が欲しいがために「故人は私たちの中に生きている」理論を最後に使ったのだ。まるで、成長するとはこういうことだ、と押し付けるかのように。そうではない。親しい者との死別への決着のつけ方はこの理論だけじゃないはずだ。そういった新しい面を提示できなかった以上、「ベイマックス」は子供向けのアニメ止まりなのである。

 とはいえ、悪い部分ばかりではない。それどころか、アクションヒーロー物として見れば、非常に優秀なアニメ映画である。王道のチームアップを丁寧に描き、見所満載のアクションシーン(特に「仮面の男」の攻撃手段はSFXをフルに使っていて大迫力である)も満足感がある。個人的にはマーベル関連の小ネタ(キャラの出自やスタン・リーなども含め)が意外にも楽しめた。
 そして何よりもベイマックスが素晴らしい。あの爬虫類じみた人造生命体から、「思わず抱きしめたくなるような」ケアロボットに変更したのは勇気のいる決断であっただろう。そして、それは見事に成功した。彼の緩慢な動きには登場するたびにクスリと笑わされ、あえてシンプルで無感情なデザインにしたことで逆に温かみが感じられるロボットとなった。「体の動き」で笑いを取るという古典的手法の重要さを改めて提示した点でも評価されるべきであろう。

 総合して、いい意味でも悪い意味でもベイマックスありきの映画であったと言える(事実、チームの面々も個性的なのに、効果的に動かせていない印象を受けた)。それでも、この寒い冬に幸せな気分になりたければ、これほどぴったりな映画もそうそう無いだろう。

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