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2017/08/30 (Wed) 俺たちポップスター

popstar.jpg


原題    Popstar: Never Stop Never Stopping
公開    2016年
上映時間  86分
製作国   アメリカ

監督    アキヴァ・シェイファー/ヨーマ・タコンヌ
脚本    アンディ・サムバーグ/アキヴァ・シェイファー/ヨーマ・タコンヌ

出演    アンディ・サムバーグ
      アキヴァ・シェイファー
      ヨーマ・タコンヌ


あらすじ
 ラップ・グループの『スタイル・ボーイズ』として一世を風靡したコナー・ローレンス・オーウェンの3人だったが、次第にコナーにばかりスポットライトが当たるようになり、彼の身勝手な性格も重なりグループは解散してしまう。そしてグループ解散後、ソロとして成功を収めたコナーの栄光と没落の軌跡をカメラは追うことになる。





鑑賞日   17年8月30日
鑑賞方法  映画館
評価    4点


レビュー
 ロブ・ライナーによる『スパイナル・タップ』は、80年代当時大仰しいまでに成長を遂げたロック界への愛と風刺を描いた傑作モキュメンタリー(ドキュメンタリー風のフィクション)でした。いくつかの媒体でも「21世紀版スパイナル・タップ」と評された本作は、馬鹿げた外見に反して、意外にもテーマに真摯に向き合って作られたもう一つの傑作なのです。

 21世紀のアメリカ音楽界を舞台にする以上、その標的となるのは間違いなく肥大化したポップミュージックに他なりません。ありきたりなメロディ、意味のない歌詞の繰り返し、しつこいほどのラップパート。そのようないわゆるステレオタイプを的確に観察し模倣した曲を冒頭から湯水のように使用し、観客をエゴの渦巻く世界へと映画は放り込みます。(ただし関わっているミュージシャンが大物ばかりなので、「あれ、いいなぁこの曲」とそのキャッチーさに多くの人は惹かれるでしょう。)

 もちろんパロディはそれだけにとどまらず、ポップアイコンそのものにも切り込んでいきます。今回主役であるコナーは、昨今話題に上がるスターたちの悪いところの寄せ集めのようなキャラクターです。取り巻きを侍らせ、自分が王様だと言わんばかりに傍若無人に振る舞いますが、数々のプロデューサーを揃えた自作のソロアルバムは大爆死。その自作の曲も、社会へのピントのずれた提言や女性蔑視に塗れ、そのひどい私生活も相待って多くの批判にさらされていきます。不思議なことに、ここまで極端でなくとも似たような人間が思い当たってしまう点がこの映画の怖いところでしょう。

 上記のような直接的に音楽に関わる部分はもちろんのこと、その他の馬鹿げた小ネタも含め、かなり念入りに構成されているので妙な信憑性を持っているところから製作陣の力の入れ具合がわかります。監督・製作・脚本・主演を担当した『ロンリー・アイランド(3人組のコメディグループ)』が自分たち自身の関係性をそのまま劇中の役に取り入れている点も、不思議なリアリティに一役買っているのでしょう。バラバラだった3人が如何に仲直りするのかという物語上の軸になるエピソードがなかなか感動的なのも頷けます。

 惜しむべきは、その仲違いした『スタイル・ボーイズ』の関係に話がフォーカスしていくので、前半では怒涛の勢いで描かれた風刺的描写が次第に薄れていくことでしょう。モキュメンタリーというスタイルが唯一無二の価値を生み出していたにもかかわらず、最終的にそこから離れてしまっては普通のフィクションのコメディ映画と大差ありません。ドキュメンタリータッチという構図から軸足を動かさなければ、真の意味での「21世紀版スパイナル・タップ」になれたかもしれません。

 そのような欠点はあるものの、それがこの映画の笑いの要素を損なうようなことはありません。アメリカ音楽を知る人ほど、「俺たちポップスター」の馬鹿げたパロディに終始笑わされることに違いはないのですから。

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2017/07/31 (Mon) デ・パルマ

de_palma.jpg


原題    De Palma
公開    2015年
上映時間  107分
製作国   アメリカ

監督    ノア・バームバック/ジェイク・パルトロー


あらすじ
 『キャリー』、『スカーフェイス』、『アンタッチャブル』に代表される数多くの映画を生み出してきたブライアン・デ・パルマの映画人生を彼自身へのインタビューから紐解いていく。





鑑賞日   17年7月31日
鑑賞方法  映画館
評価    4点


レビュー
 この手のドキュメンタリー映画を想像すると、大抵の場合は本人及び周囲の人たちの証言をもとに、題材となる人物の人生や考え方を浮き彫りにするものが多いはずです。ところがこの映画はそのように凝ったことは一切していません。監督のフィルモグラフィーを順に追っていき、それを監督自身の言葉でひたすら語ってもらうという何とも男気溢れる作りになっているのです。

 そもそもブライアン・デ・パルマに対してのイメージは、最近ではいわゆる「カルト映画」を量産し、タランティーノなどの多くの信奉者を生み出したというので統一されているのでは無いでしょうか。「名監督」というには近年含め駄作と言われるものも多く、なかなか評価の難しい人ではあります。その彼自身の目を通した時、一体どんな真実が浮かび上がってくるのでしょうか。
 実のところ、何か新しい事実が判明したりするわけでも、彼に対して奥深い考察がなされるわけではありません。序盤に本当に少しだけ、彼の人生について簡単に教えてくれますが、それ以降はひたすら舞台裏の話が続きます。彼の人となりや映画界への影響といった客観的事実を求めてしまえば、このドキュメンタリー映画は間違いなくドキュメンタリーとして失格と言えるでしょう。

 しかしながら、アマチュア時代の短編も含め、彼のフィルモグラフィーを徹底的に考察して行くそのスタイルは単純ながらとても興味深いのです。よく知られている通り、デ・パルマの作風には明らかに著名なサスペンス映画からの影響が数多く見て取れます。少し前まではそれについて言及されることを嫌っていたらしいですが、今作中ではあっけらかんとヒッチコックなどからの影響があることを自ら話しているのです。なぜ彼があの構図を好むのか、どうしてああいった作風が多いのか。他者によって研究し尽くされたとも言えるデ・パルマの映画論が、彼の口から語られることでより一層の真実味を帯びていることが、この作品の一線を画する点には違いありません。

 全体を通すと、いかに彼がひとつひとつの作品に対し妥協なく作っているかが分かります。見る側からすればある日公開されたただの駄作でも、彼からすれば長い製作期間を通してやっとできた完成品のひとつなのです。臨場感あふれる語り口が、彼の持つ映画への情熱をありありと伝えてくれ、駄作だったはずの映画をもう一度見たいと思わせ、名作を不朽のクラシックへと昇華させる。
 彼の作品群だけでなく、その他にある無数の玉石混交の映画たちの素晴らしさを再度認識させてくれる、シンプルなのになんともユニークなインタビューなのです。

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2017/07/20 (Thu) インソムニア

insomnia.jpg


原題    Insomnia
公開    2002年
上映時間  118分
製作国   アメリカ

監督    クリストファー・ノーラン
脚本    ヒラリー・セイツ

出演    アル・パチーノ
      ロビン・ウィリアムズ
      ヒラリー・スワンク


あらすじ
 アラスカにあるナイトミュートという小さな町で、17歳の少女ケイが何者かに撲殺された。ロサンゼルス市警の刑事ドーマーとエッカートは地元警察を支援するために現地に赴く。犯人の手がかりを見つけ、後一歩のところまで追い詰めるものの、ドーマーは犯人と間違えエッカートを誤射し殺害してしまう。それからというもの、一日中日が沈まない白夜の続く町で、罪悪感にさいなまされるドーマーは不眠症に陥る。そんな折に、真犯人からドーマーに直接連絡が来る。





鑑賞日   17年7月20日
鑑賞方法  DVD
評価    4点


レビュー
 通常、リメイク作品がオリジナルを超えるのはなかなかに難しいでしょう。近年の批評もしくは興行で失敗に終わったいくつかの作品を見れば、それは一目瞭然です。しかしながらノーランによるノルウェー映画のリメイクである本作は、そういった壁を乗り越え、自らもオリジナリティを持つような、まさにリメイクのお手本として仕上がっています。

 大まかなプロットはほぼ同じと言って差し支えがないでしょう。白夜の続く町で起きた事件というオリジナル版の設定をそのまま引き継ぐために、舞台をアラスカに置き換え、そのあとの流れも終盤を除き一緒です。もっとも、いくつかの重要なポイントを変えることで、物語の性質は全く持って異なります。

 その一つが主人公のキャラクター設定。オリジナル版のステラン・スカルスガルドよりも10歳以上年長のアル・パチーノが演じることで、経験の豊富さを前面に押し出しています。またそれに伴い、オリジナル版では根底に流れていた性的な側面を全面的に排除し、正義と悪の境界というテーマを明確に打ち出していました。この点に関して言えば、良い面も悪い面もあると言えるでしょう。
 まず主人公の「後ろ暗い過去」が全く異なるものにすり替えられたので、相棒を射殺してしまったことによる葛藤がより複雑で納得のいくものに変更されています。狂気じみた正義感というキャラクター自体、時折オーバーな演技になってしまうアル・パチーノが演じるにはぴったりの役柄です。不眠症に悩まされる姿も、スカルスガルドの抑えた演技も良いですが、今作の方がその疲労感などがはっきりと画面から伝わって来ます。実際、ここ20年の中では彼にとってベストに近い演技ではないでしょうか。
 反対に、オリジナルにあったジメジメとした陰鬱な雰囲気は皆無に近いです。独特のねっとりとした不気味さがなくなったことで、シンプルな事件のあらましが余計に浮き出てしまい、ありがちな刑事ものによってしまったことも事実です。ロビン・ウィリアムズ演じる犯人含め、事件に関わる人間の印象が一様に薄くなったことは欠点に違いありません。

 しかしながら、細かなポイントを注意深く見ていくと、この映画が如何にオリジナル版を研究しているか分かるはずです。ところどころ説明がなされずおざなりになっていた部分を、上記の変更点などを用いながらうまく理由づけていくことで、より緻密な構成になっています。だからこそ同じ出来事を描いていても、受け取る側(すなわち観客)は全く違う印象を受けるので、この映画自体を一つのオリジナル作品として捉えることができるのです。結末の改変については賛否両論あるかもしれませんが、少なくともこの一つの映画においては、一貫したテーマを伝える上でも最良の選択肢ではないでしょうか。

 その他のノーランによる作品に比べると極めてベーシックな作りで、インパクトのあるものではありませんが、一つのサスペンスとして考えれば、これほど満足感のあるリメイクにはなかなか出会えないのです。

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2017/07/19 (Wed) メメント

memento.jpg


原題    Memento
公開    2000年
上映時間  113分
製作国   アメリカ

監督    クリストファー・ノーラン
脚本    クリストファー・ノーラン

出演    ガイ・ピアース
      キャリー=アン・モス
      ジョー・パントリアーノ


あらすじ
 ある日、保険会社の調査員であったレナードは、自宅に押し入り妻に暴行を加えた男に殴られ、記憶障害を負ってしまう。妻を殺され、自身も10分間しか記憶を保てなくなった彼は、日々犯人の行方を追っていた。重要な証拠は体に刺青として残し、知り合った人間を記録するために写真を撮るなど工夫をすることで、自らのハンディキャップを克服しながら、彼は次第に真相に近づいていく。





鑑賞日   17年7月16日
鑑賞方法  Netflix
評価    4点


レビュー
 クリストファー・ノーランの名前を世界に知らしめた、精巧に組み上げられたサスペンス映画です。前作『フォロウィング』でも時系列を交錯させるなど、既にその手法の片鱗は見えていましたが、今回はそれをストーリーの根幹として全面的に採用し、それが見事に功を奏したのです。

 よく時系列が逆転しているという点で話題に上りますが、厳密にいうと映画は2つのパートに分かれています。まずは実質上のエンディングからスタートし、10分毎の展開を描くたびに一つ前の時間へと戻るカラーの部分。そして主人公のレナードが何者かに電話をし、通常通り過去から未来へと時間が流れるモノクロの部分。何より見事なのは、この2つのパートが謎を提示しながらも、互いのエピソードのヒントとなるものを少しずつ露わにし、最後にはまさに「一つの線で繋がる」という文字どおりの経験を観客ができる点にあると思います。このギミックを用いながら、難しい映画だと感じさせつつも純粋に楽しめるものとして仕上げている点が、ノーランの中の作家性とエンターテイメント性のバランス感を明示しているでしょう。

 単純に個々のエピソードのつながりを見るのも大変面白いです。物語が急展開した後に、その答えが明かされるという一種のクイズのような構造になっているため、謎のすっきり感が得られること請け負いです。それに加え、映画の中で描かれる時間はさほど長くはないため、実際にはとてもスピーディーな展開となり、複雑ながらもテンポよく見られる点も素晴らしい。

 しかしながら、一つのサスペンスとして考えた時、よくよく考えると筋の通っていない、もしくは映画の中では明確に答えが提示されていないものもいくつかある点は気になります。そのロジック自体を重要な要素の一つとして取り上げるのであれば、できることなら漏れなく構成して欲しかったと思ってしまいます。もちろん、この映画以上に巧みに組まれた映画など無いに等しいことは前提なのですが。
 また登場人物の少なさが、予期せぬポイントで観客を混乱させているようにも感じられました。もちろん、毎回当然登場する協力者のテディなど、ミスリーディングとして成立しているキャラクターもいますが、話の中心には絡んでこないエピソードが意外にも複雑なのです。大筋とは関係のない部分で混乱し、見終わった後にモヤモヤとした感情が残るのは本来制作側が意図したものではないに違いないのです。

 結局のところ、『フォロウィング』と同様、登場人物の内面を深く考察する映画ではなく、純粋に脚本の組み立てや絶妙な緊張感を味わう映画なのです。レナードの憎悪や復讐にかられる気持ちは残念ながら伝わっては来ません。しかしながら、記憶を失うという主人公と同じ体験をできるという点で見た時、これほどまでに楽しめ優れた映画はこの世に存在しないでしょう。

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2017/07/07 (Fri) ジョン・ウィック:チャプター2

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原題    John Wick: Chapter 2
公開    2017年
上映時間  122分
製作国   アメリカ

監督    チャド・スタエルスキ
脚本    デレク・コルスタッド

出演    キアヌ・リーブス
      コモン
      ローレンス・フィッシュバーン


あらすじ
 前作から4日後。なんとか愛車を取り戻したジョン・ウィックは、新たな飼い犬と平穏な暮らしへ戻ろうとするところだった。そんな中、昔に血の「誓印」を交わした、イタリアの闇社会の大物サンティーノ・ダントニオが現れる。彼は「誓印」を盾にジョンに暗殺の仕事を依頼するが、当然のごとく断るジョン。それに腹を立てたサンティーノはジョンの家を爆破し、ジョンは彼からの仕事を受けざるを得なくなるのであった。





鑑賞日   17年7月7日
鑑賞方法  映画館
評価    4点


レビュー
 満を持して公開された、キアヌ・リーブス主演で意外なヒットを飛ばしたアクション『ジョン・ウィック』続編です。前作がマフィアとの抗争という、この手の映画の定石をなぞる設定だったのに対し、今回は裏社会の戒律や暗殺者集団に焦点を当てています。この脚本上の転換により、映画はグラフィック・ノベルのような荒唐無稽さに拍車をかけ、めまぐるしいアクションシーンが展開されます。

 さてこの転換により一つ分かったことは、キアヌ・リーブスが主演であることがどれだけ重要であるかということ。飄々としていて冷静な雰囲気の(というか何も考えていないようにも見えてしまう時も)ある彼がジョンを演じることで、ともすれば純粋なB級映画になってしまう設定にリアルな深みを持たせています。そのおかげで、多くは描かれない彼のバックボーンも観客は簡単に思い描け、殺し屋という側面に畏怖できるのです。

 また上にも記載しました、謎の裏社会のしきたりもとても興味深い。明確にシステムが描かれるわけではありませんが、ジョン・ウィックだけではなくそこに「世界」があることを実感できるので、非常に好奇心をそそられます。ほとんどのキャラクターは「久しぶりだな、ジョン」といった具合で登場しすぐに退場しますが、薄っぺらであるはずの敵にも何らかのストーリーがあることを想像させてくれるのです。これが、この映画の他のアクション映画と一線を画するポイントでしょう。

 しかしながら、そういったコミック調の雰囲気が楽しいのも事実ですが、前作の重々しい空気が懐かしいのもまた事実。ウィレム・デフォー演じるマーカスとの掛け合いなど、ど定番とも言えるアツい展開や、じわりじわりと敵のボスを追い詰めて行く様など、前作の方がしっかりとストーリーを追えていたように思います。おそらく、前作で製作兼アンクレジットの監督であったデヴィッド・リーチがそういった脚本周りを引き締めていたのかもしれません。ジョンが孤軍奮闘し、とにかく死体の山を作っていく面白さにフォーカスした本作は、そういった意味では若干の寂しさを感じさせました。

 一通り批判もしましたが、彼の活躍をまだまだ見たいのは本当です。ジョンが平穏を願う中、きっと多くの人々はその反対を願わずにはいられないでしょう。

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