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2017/07/31 (Mon) デ・パルマ

de_palma.jpg


原題    De Palma
公開    2015年
上映時間  107分
製作国   アメリカ

監督    ノア・バームバック/ジェイク・パルトロー


あらすじ
 『キャリー』、『スカーフェイス』、『アンタッチャブル』に代表される数多くの映画を生み出してきたブライアン・デ・パルマの映画人生を彼自身へのインタビューから紐解いていく。





鑑賞日   17年7月31日
鑑賞方法  映画館
評価    4点


レビュー
 この手のドキュメンタリー映画を想像すると、大抵の場合は本人及び周囲の人たちの証言をもとに、題材となる人物の人生や考え方を浮き彫りにするものが多いはずです。ところがこの映画はそのように凝ったことは一切していません。監督のフィルモグラフィーを順に追っていき、それを監督自身の言葉でひたすら語ってもらうという何とも男気溢れる作りになっているのです。

 そもそもブライアン・デ・パルマに対してのイメージは、最近ではいわゆる「カルト映画」を量産し、タランティーノなどの多くの信奉者を生み出したというので統一されているのでは無いでしょうか。「名監督」というには近年含め駄作と言われるものも多く、なかなか評価の難しい人ではあります。その彼自身の目を通した時、一体どんな真実が浮かび上がってくるのでしょうか。
 実のところ、何か新しい事実が判明したりするわけでも、彼に対して奥深い考察がなされるわけではありません。序盤に本当に少しだけ、彼の人生について簡単に教えてくれますが、それ以降はひたすら舞台裏の話が続きます。彼の人となりや映画界への影響といった客観的事実を求めてしまえば、このドキュメンタリー映画は間違いなくドキュメンタリーとして失格と言えるでしょう。

 しかしながら、アマチュア時代の短編も含め、彼のフィルモグラフィーを徹底的に考察して行くそのスタイルは単純ながらとても興味深いのです。よく知られている通り、デ・パルマの作風には明らかに著名なサスペンス映画からの影響が数多く見て取れます。少し前まではそれについて言及されることを嫌っていたらしいですが、今作中ではあっけらかんとヒッチコックなどからの影響があることを自ら話しているのです。なぜ彼があの構図を好むのか、どうしてああいった作風が多いのか。他者によって研究し尽くされたとも言えるデ・パルマの映画論が、彼の口から語られることでより一層の真実味を帯びていることが、この作品の一線を画する点には違いありません。

 全体を通すと、いかに彼がひとつひとつの作品に対し妥協なく作っているかが分かります。見る側からすればある日公開されたただの駄作でも、彼からすれば長い製作期間を通してやっとできた完成品のひとつなのです。臨場感あふれる語り口が、彼の持つ映画への情熱をありありと伝えてくれ、駄作だったはずの映画をもう一度見たいと思わせ、名作を不朽のクラシックへと昇華させる。
 彼の作品群だけでなく、その他にある無数の玉石混交の映画たちの素晴らしさを再度認識させてくれる、シンプルなのになんともユニークなインタビューなのです。

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2017/07/20 (Thu) インソムニア

insomnia.jpg


原題    Insomnia
公開    2002年
上映時間  118分
製作国   アメリカ

監督    クリストファー・ノーラン
脚本    ヒラリー・セイツ

出演    アル・パチーノ
      ロビン・ウィリアムズ
      ヒラリー・スワンク


あらすじ
 アラスカにあるナイトミュートという小さな町で、17歳の少女ケイが何者かに撲殺された。ロサンゼルス市警の刑事ドーマーとエッカートは地元警察を支援するために現地に赴く。犯人の手がかりを見つけ、後一歩のところまで追い詰めるものの、ドーマーは犯人と間違えエッカートを誤射し殺害してしまう。それからというもの、一日中日が沈まない白夜の続く町で、罪悪感にさいなまされるドーマーは不眠症に陥る。そんな折に、真犯人からドーマーに直接連絡が来る。





鑑賞日   17年7月20日
鑑賞方法  DVD
評価    4点


レビュー
 通常、リメイク作品がオリジナルを超えるのはなかなかに難しいでしょう。近年の批評もしくは興行で失敗に終わったいくつかの作品を見れば、それは一目瞭然です。しかしながらノーランによるノルウェー映画のリメイクである本作は、そういった壁を乗り越え、自らもオリジナリティを持つような、まさにリメイクのお手本として仕上がっています。

 大まかなプロットはほぼ同じと言って差し支えがないでしょう。白夜の続く町で起きた事件というオリジナル版の設定をそのまま引き継ぐために、舞台をアラスカに置き換え、そのあとの流れも終盤を除き一緒です。もっとも、いくつかの重要なポイントを変えることで、物語の性質は全く持って異なります。

 その一つが主人公のキャラクター設定。オリジナル版のステラン・スカルスガルドよりも10歳以上年長のアル・パチーノが演じることで、経験の豊富さを前面に押し出しています。またそれに伴い、オリジナル版では根底に流れていた性的な側面を全面的に排除し、正義と悪の境界というテーマを明確に打ち出していました。この点に関して言えば、良い面も悪い面もあると言えるでしょう。
 まず主人公の「後ろ暗い過去」が全く異なるものにすり替えられたので、相棒を射殺してしまったことによる葛藤がより複雑で納得のいくものに変更されています。狂気じみた正義感というキャラクター自体、時折オーバーな演技になってしまうアル・パチーノが演じるにはぴったりの役柄です。不眠症に悩まされる姿も、スカルスガルドの抑えた演技も良いですが、今作の方がその疲労感などがはっきりと画面から伝わって来ます。実際、ここ20年の中では彼にとってベストに近い演技ではないでしょうか。
 反対に、オリジナルにあったジメジメとした陰鬱な雰囲気は皆無に近いです。独特のねっとりとした不気味さがなくなったことで、シンプルな事件のあらましが余計に浮き出てしまい、ありがちな刑事ものによってしまったことも事実です。ロビン・ウィリアムズ演じる犯人含め、事件に関わる人間の印象が一様に薄くなったことは欠点に違いありません。

 しかしながら、細かなポイントを注意深く見ていくと、この映画が如何にオリジナル版を研究しているか分かるはずです。ところどころ説明がなされずおざなりになっていた部分を、上記の変更点などを用いながらうまく理由づけていくことで、より緻密な構成になっています。だからこそ同じ出来事を描いていても、受け取る側(すなわち観客)は全く違う印象を受けるので、この映画自体を一つのオリジナル作品として捉えることができるのです。結末の改変については賛否両論あるかもしれませんが、少なくともこの一つの映画においては、一貫したテーマを伝える上でも最良の選択肢ではないでしょうか。

 その他のノーランによる作品に比べると極めてベーシックな作りで、インパクトのあるものではありませんが、一つのサスペンスとして考えれば、これほど満足感のあるリメイクにはなかなか出会えないのです。

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2017/07/19 (Wed) メメント

memento.jpg


原題    Memento
公開    2000年
上映時間  113分
製作国   アメリカ

監督    クリストファー・ノーラン
脚本    クリストファー・ノーラン

出演    ガイ・ピアース
      キャリー=アン・モス
      ジョー・パントリアーノ


あらすじ
 ある日、保険会社の調査員であったレナードは、自宅に押し入り妻に暴行を加えた男に殴られ、記憶障害を負ってしまう。妻を殺され、自身も10分間しか記憶を保てなくなった彼は、日々犯人の行方を追っていた。重要な証拠は体に刺青として残し、知り合った人間を記録するために写真を撮るなど工夫をすることで、自らのハンディキャップを克服しながら、彼は次第に真相に近づいていく。





鑑賞日   17年7月16日
鑑賞方法  Netflix
評価    4点


レビュー
 クリストファー・ノーランの名前を世界に知らしめた、精巧に組み上げられたサスペンス映画です。前作『フォロウィング』でも時系列を交錯させるなど、既にその手法の片鱗は見えていましたが、今回はそれをストーリーの根幹として全面的に採用し、それが見事に功を奏したのです。

 よく時系列が逆転しているという点で話題に上りますが、厳密にいうと映画は2つのパートに分かれています。まずは実質上のエンディングからスタートし、10分毎の展開を描くたびに一つ前の時間へと戻るカラーの部分。そして主人公のレナードが何者かに電話をし、通常通り過去から未来へと時間が流れるモノクロの部分。何より見事なのは、この2つのパートが謎を提示しながらも、互いのエピソードのヒントとなるものを少しずつ露わにし、最後にはまさに「一つの線で繋がる」という文字どおりの経験を観客ができる点にあると思います。このギミックを用いながら、難しい映画だと感じさせつつも純粋に楽しめるものとして仕上げている点が、ノーランの中の作家性とエンターテイメント性のバランス感を明示しているでしょう。

 単純に個々のエピソードのつながりを見るのも大変面白いです。物語が急展開した後に、その答えが明かされるという一種のクイズのような構造になっているため、謎のすっきり感が得られること請け負いです。それに加え、映画の中で描かれる時間はさほど長くはないため、実際にはとてもスピーディーな展開となり、複雑ながらもテンポよく見られる点も素晴らしい。

 しかしながら、一つのサスペンスとして考えた時、よくよく考えると筋の通っていない、もしくは映画の中では明確に答えが提示されていないものもいくつかある点は気になります。そのロジック自体を重要な要素の一つとして取り上げるのであれば、できることなら漏れなく構成して欲しかったと思ってしまいます。もちろん、この映画以上に巧みに組まれた映画など無いに等しいことは前提なのですが。
 また登場人物の少なさが、予期せぬポイントで観客を混乱させているようにも感じられました。もちろん、毎回当然登場する協力者のテディなど、ミスリーディングとして成立しているキャラクターもいますが、話の中心には絡んでこないエピソードが意外にも複雑なのです。大筋とは関係のない部分で混乱し、見終わった後にモヤモヤとした感情が残るのは本来制作側が意図したものではないに違いないのです。

 結局のところ、『フォロウィング』と同様、登場人物の内面を深く考察する映画ではなく、純粋に脚本の組み立てや絶妙な緊張感を味わう映画なのです。レナードの憎悪や復讐にかられる気持ちは残念ながら伝わっては来ません。しかしながら、記憶を失うという主人公と同じ体験をできるという点で見た時、これほどまでに楽しめ優れた映画はこの世に存在しないでしょう。

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2017/07/07 (Fri) ジョン・ウィック:チャプター2

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原題    John Wick: Chapter 2
公開    2017年
上映時間  122分
製作国   アメリカ

監督    チャド・スタエルスキ
脚本    デレク・コルスタッド

出演    キアヌ・リーブス
      コモン
      ローレンス・フィッシュバーン


あらすじ
 前作から4日後。なんとか愛車を取り戻したジョン・ウィックは、新たな飼い犬と平穏な暮らしへ戻ろうとするところだった。そんな中、昔に血の「誓印」を交わした、イタリアの闇社会の大物サンティーノ・ダントニオが現れる。彼は「誓印」を盾にジョンに暗殺の仕事を依頼するが、当然のごとく断るジョン。それに腹を立てたサンティーノはジョンの家を爆破し、ジョンは彼からの仕事を受けざるを得なくなるのであった。





鑑賞日   17年7月7日
鑑賞方法  映画館
評価    4点


レビュー
 満を持して公開された、キアヌ・リーブス主演で意外なヒットを飛ばしたアクション『ジョン・ウィック』続編です。前作がマフィアとの抗争という、この手の映画の定石をなぞる設定だったのに対し、今回は裏社会の戒律や暗殺者集団に焦点を当てています。この脚本上の転換により、映画はグラフィック・ノベルのような荒唐無稽さに拍車をかけ、めまぐるしいアクションシーンが展開されます。

 さてこの転換により一つ分かったことは、キアヌ・リーブスが主演であることがどれだけ重要であるかということ。飄々としていて冷静な雰囲気の(というか何も考えていないようにも見えてしまう時も)ある彼がジョンを演じることで、ともすれば純粋なB級映画になってしまう設定にリアルな深みを持たせています。そのおかげで、多くは描かれない彼のバックボーンも観客は簡単に思い描け、殺し屋という側面に畏怖できるのです。

 また上にも記載しました、謎の裏社会のしきたりもとても興味深い。明確にシステムが描かれるわけではありませんが、ジョン・ウィックだけではなくそこに「世界」があることを実感できるので、非常に好奇心をそそられます。ほとんどのキャラクターは「久しぶりだな、ジョン」といった具合で登場しすぐに退場しますが、薄っぺらであるはずの敵にも何らかのストーリーがあることを想像させてくれるのです。これが、この映画の他のアクション映画と一線を画するポイントでしょう。

 しかしながら、そういったコミック調の雰囲気が楽しいのも事実ですが、前作の重々しい空気が懐かしいのもまた事実。ウィレム・デフォー演じるマーカスとの掛け合いなど、ど定番とも言えるアツい展開や、じわりじわりと敵のボスを追い詰めて行く様など、前作の方がしっかりとストーリーを追えていたように思います。おそらく、前作で製作兼アンクレジットの監督であったデヴィッド・リーチがそういった脚本周りを引き締めていたのかもしれません。ジョンが孤軍奮闘し、とにかく死体の山を作っていく面白さにフォーカスした本作は、そういった意味では若干の寂しさを感じさせました。

 一通り批判もしましたが、彼の活躍をまだまだ見たいのは本当です。ジョンが平穏を願う中、きっと多くの人々はその反対を願わずにはいられないでしょう。

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2017/07/07 (Fri) ハクソー・リッジ

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原題    Hacksaw Ridge
公開    2016年
上映時間 139分
製作国   アメリカ/オーストラリア

監督    メル・ギブソン
脚本    ロバート・シェンカン/アンドリュー・ナイト

出演    アンドリュー・ガーフィールド
      ヴィンス・ヴォーン
      サム・ワーシントン


あらすじ
 1940年代、ヴァージニア州で生まれ育ったデズモンド・ドスは、国が太平洋戦争に揺れる中、自らも軍へ志願する。しかしながら敬虔なキリスト教徒であるデズモンドは、「汝、殺すことなかれ」という聖書の言葉を信条としており、銃に触れることができなかった。周りからの理解が得られずに葛藤する中、沖縄戦の激戦地である「ハクソー・リッジ」への出兵が決まる。





鑑賞日  17年7月7日
鑑賞方法 映画館
評価    4点


レビュー
 世の中の話題となった事件を起こして以来、すっかり表舞台に立たなくなってしまったメル・ギブソン。とは言っても、『エクスペンダブルズ3』などのアクション映画にはちょくちょく顔を出していましたが。そんな彼の完全復帰を印象付けることになったのがこの『ハクソー・リッジ』です。

 物語の構成自体はオーソドックスな戦争映画と同じです。「幸せに暮らしていた主人公がある日戦地に行くことを決意し、訓練で厳しい上司にしごかれる毎日を過ごしていたが、いざ戦地に行って見るとそこはさらなる地獄だった」というあらすじを基本に、主人公から銃器を取り上げればこの映画の完成になります。
 取り上げる、と書きましたが何も脚本のために創作したと言いたいわけではなく、むしろこの映画は史実にかなり正確に沿って作られたそうです。生前のデズモンド・ドス本人は自らが英雄視されることを望まず、映画化・書籍化の話を幾度となく断ってきたようですが、死後に製作されたこの作品でも彼の遺志は受け継がれています。現に、ドラマチックにするために改変されたエピソードはあれど、彼の行動原理や信条はアンドリュー・ガーフィールドの手によりそのまま息づいています。『パッション』や『アポカリプト』では、自分自身の思想を反映しすぎているとして批判されたメル・ギブソンにしてはこの点が非常に評価できるポイントなのではないでしょうか。きっとここ数年で心情の変化があったのでしょうね。

 とはいえベースが比較的定石通りなので、特に序盤はホームドラマばりのクサい場面の連続です。妻となるドロシーとの出会いの場面などはスパイダーマンの前日談でも見せられているかの気分に陥ること間違いなしです(しかも当時まだ看護師ではなかったドロシーをわざわざ改変してまで描いています)。また、そういった導入部が以外にも長いせいか、セブンスデー・アドベンティストであるデズモンドのバックグラウンドや特殊性は思いの外に掘り下げられないため、あまり宗教に慣れ親しんでいない人にはそれこそ彼がただの頑固者に見えるかもしれません。神への信心と一人間としての心情のぶつかり合いがこの映画のメインテーマであるにもかかわらず、内面的な動きよりも、史実を追うだけの部分があるのは非常に勿体無いでしょう。

 しかしながら、いざ戦地での場面に移ると、メル・ギブソンの監督としての腕がまったく衰えていなかったことに多くの人が気付かされること請け負いです。それどころか、より磨かれていると言っても過言ではないでしょう。あまりにも生々しい戦地の描写は、見ているだけのこちら側も思わず息をするのを忘れるほどの臨場感を持ち、それでいて以前のような過剰な暴力描写は鳴りを潜め、ここぞという場面で不意に画面いっぱいに広がります。それが余計に、戦地という現場の無情さ、苛烈な戦闘で次第に押しつぶされる人間性を克明に描き出し、非暴力を貫いたデズモンドの鋼の精神と明確なコントラストを浮かび上がらせるのです。そしてそれらがリアリティを持って描かれるからこそ、彼のとった行動の素晴らしさを実感し、それが事実であることに再度驚かされます。

 敵味方関係なくできる限りの命を助けたデズモンド・ドスは、真に偉大な人間であり、死後10年以上経った今も、彼の心は宗教をも超えて人々を感服させるのです。

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