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2017/07/20 (Thu) インソムニア

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原題    Insomnia
公開    2002年
上映時間  118分
製作国   アメリカ

監督    クリストファー・ノーラン
脚本    ヒラリー・セイツ

出演    アル・パチーノ
      ロビン・ウィリアムズ
      ヒラリー・スワンク


あらすじ
 アラスカにあるナイトミュートという小さな町で、17歳の少女ケイが何者かに撲殺された。ロサンゼルス市警の刑事ドーマーとエッカートは地元警察を支援するために現地に赴く。犯人の手がかりを見つけ、後一歩のところまで追い詰めるものの、ドーマーは犯人と間違えエッカートを誤射し殺害してしまう。それからというもの、一日中日が沈まない白夜の続く町で、罪悪感にさいなまされるドーマーは不眠症に陥る。そんな折に、真犯人からドーマーに直接連絡が来る。





鑑賞日   17年7月20日
鑑賞方法  DVD
評価    4点


レビュー
 通常、リメイク作品がオリジナルを超えるのはなかなかに難しいでしょう。近年の批評もしくは興行で失敗に終わったいくつかの作品を見れば、それは一目瞭然です。しかしながらノーランによるノルウェー映画のリメイクである本作は、そういった壁を乗り越え、自らもオリジナリティを持つような、まさにリメイクのお手本として仕上がっています。

 大まかなプロットはほぼ同じと言って差し支えがないでしょう。白夜の続く町で起きた事件というオリジナル版の設定をそのまま引き継ぐために、舞台をアラスカに置き換え、そのあとの流れも終盤を除き一緒です。もっとも、いくつかの重要なポイントを変えることで、物語の性質は全く持って異なります。

 その一つが主人公のキャラクター設定。オリジナル版のステラン・スカルスガルドよりも10歳以上年長のアル・パチーノが演じることで、経験の豊富さを前面に押し出しています。またそれに伴い、オリジナル版では根底に流れていた性的な側面を全面的に排除し、正義と悪の境界というテーマを明確に打ち出していました。この点に関して言えば、良い面も悪い面もあると言えるでしょう。
 まず主人公の「後ろ暗い過去」が全く異なるものにすり替えられたので、相棒を射殺してしまったことによる葛藤がより複雑で納得のいくものに変更されています。狂気じみた正義感というキャラクター自体、時折オーバーな演技になってしまうアル・パチーノが演じるにはぴったりの役柄です。不眠症に悩まされる姿も、スカルスガルドの抑えた演技も良いですが、今作の方がその疲労感などがはっきりと画面から伝わって来ます。実際、ここ20年の中では彼にとってベストに近い演技ではないでしょうか。
 反対に、オリジナルにあったジメジメとした陰鬱な雰囲気は皆無に近いです。独特のねっとりとした不気味さがなくなったことで、シンプルな事件のあらましが余計に浮き出てしまい、ありがちな刑事ものによってしまったことも事実です。ロビン・ウィリアムズ演じる犯人含め、事件に関わる人間の印象が一様に薄くなったことは欠点に違いありません。

 しかしながら、細かなポイントを注意深く見ていくと、この映画が如何にオリジナル版を研究しているか分かるはずです。ところどころ説明がなされずおざなりになっていた部分を、上記の変更点などを用いながらうまく理由づけていくことで、より緻密な構成になっています。だからこそ同じ出来事を描いていても、受け取る側(すなわち観客)は全く違う印象を受けるので、この映画自体を一つのオリジナル作品として捉えることができるのです。結末の改変については賛否両論あるかもしれませんが、少なくともこの一つの映画においては、一貫したテーマを伝える上でも最良の選択肢ではないでしょうか。

 その他のノーランによる作品に比べると極めてベーシックな作りで、インパクトのあるものではありませんが、一つのサスペンスとして考えれば、これほど満足感のあるリメイクにはなかなか出会えないのです。

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2017/07/19 (Wed) メメント

memento.jpg


原題    Memento
公開    2000年
上映時間  113分
製作国   アメリカ

監督    クリストファー・ノーラン
脚本    クリストファー・ノーラン

出演    ガイ・ピアース
      キャリー=アン・モス
      ジョー・パントリアーノ


あらすじ
 ある日、保険会社の調査員であったレナードは、自宅に押し入り妻に暴行を加えた男に殴られ、記憶障害を負ってしまう。妻を殺され、自身も10分間しか記憶を保てなくなった彼は、日々犯人の行方を追っていた。重要な証拠は体に刺青として残し、知り合った人間を記録するために写真を撮るなど工夫をすることで、自らのハンディキャップを克服しながら、彼は次第に真相に近づいていく。





鑑賞日   17年7月16日
鑑賞方法  Netflix
評価    4点


レビュー
 クリストファー・ノーランの名前を世界に知らしめた、精巧に組み上げられたサスペンス映画です。前作『フォロウィング』でも時系列を交錯させるなど、既にその手法の片鱗は見えていましたが、今回はそれをストーリーの根幹として全面的に採用し、それが見事に功を奏したのです。

 よく時系列が逆転しているという点で話題に上りますが、厳密にいうと映画は2つのパートに分かれています。まずは実質上のエンディングからスタートし、10分毎の展開を描くたびに一つ前の時間へと戻るカラーの部分。そして主人公のレナードが何者かに電話をし、通常通り過去から未来へと時間が流れるモノクロの部分。何より見事なのは、この2つのパートが謎を提示しながらも、互いのエピソードのヒントとなるものを少しずつ露わにし、最後にはまさに「一つの線で繋がる」という文字どおりの経験を観客ができる点にあると思います。このギミックを用いながら、難しい映画だと感じさせつつも純粋に楽しめるものとして仕上げている点が、ノーランの中の作家性とエンターテイメント性のバランス感を明示しているでしょう。

 単純に個々のエピソードのつながりを見るのも大変面白いです。物語が急展開した後に、その答えが明かされるという一種のクイズのような構造になっているため、謎のすっきり感が得られること請け負いです。それに加え、映画の中で描かれる時間はさほど長くはないため、実際にはとてもスピーディーな展開となり、複雑ながらもテンポよく見られる点も素晴らしい。

 しかしながら、一つのサスペンスとして考えた時、よくよく考えると筋の通っていない、もしくは映画の中では明確に答えが提示されていないものもいくつかある点は気になります。そのロジック自体を重要な要素の一つとして取り上げるのであれば、できることなら漏れなく構成して欲しかったと思ってしまいます。もちろん、この映画以上に巧みに組まれた映画など無いに等しいことは前提なのですが。
 また登場人物の少なさが、予期せぬポイントで観客を混乱させているようにも感じられました。もちろん、毎回当然登場する協力者のテディなど、ミスリーディングとして成立しているキャラクターもいますが、話の中心には絡んでこないエピソードが意外にも複雑なのです。大筋とは関係のない部分で混乱し、見終わった後にモヤモヤとした感情が残るのは本来制作側が意図したものではないに違いないのです。

 結局のところ、『フォロウィング』と同様、登場人物の内面を深く考察する映画ではなく、純粋に脚本の組み立てや絶妙な緊張感を味わう映画なのです。レナードの憎悪や復讐にかられる気持ちは残念ながら伝わっては来ません。しかしながら、記憶を失うという主人公と同じ体験をできるという点で見た時、これほどまでに楽しめ優れた映画はこの世に存在しないでしょう。

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2017/07/19 (Wed) 千と千尋の神隠し

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英題    Spirited Away
公開    2001年
上映時間  125分
製作国   日本

監督    宮崎駿
脚本    宮崎駿

声の出演  柊瑠美
      入野自由
      夏木マリ


あらすじ
 10歳の少女、千尋は両親とともに引越し先へ向かっていた。途中、森の中にあったトンネルを抜けると、そこは人間が来てはならない八百万の神が集う温泉街であった。気づくと両親は豚に変えられ、元の世界へ戻ることができなくなった千尋は、ハクという名の少年の力を借りながら、「油屋」という湯屋で働くことで両親とともに帰ろうとする。





鑑賞日   17年7月14日
鑑賞方法  DVD
評価    5点


レビュー
 この映画が世に出てから既に16年が経とうとしている事実に驚く。それほどに、『千と千尋の神隠し』は色褪せることのない傑作なのである。

 少女の一夏の冒険という、青少年ものとしては定番の形式を持ちながらも、この映画は細部に至るまでオリジナリティに満ち溢れている。唯一無二の世界観や多彩なキャラクターの造形、言葉に頼りすぎない語り口。映画の中では千尋を中心に描かれているものの、彼女が存在していた周囲以外にも世界が存在していることを実感させてくれる。実写でなく、アニメーションで描くことの意義について深く理解しているからこそ成し得る熟練の技だろう。

 構造上のストーリーは意外にも単純であり、子供にも十分理解できるものである。しかし、そこに隠されたテーマ性を垣間見ることのできる年齢に達すれば、大人でも深く頷くような叙情性に気づくだろう。終盤の展開など、この映画のためだけに一冊の本が出るほどに様々な解釈がなされているが、そういった細かなロジックが大事なわけではない。本当に重要なのは、感覚でしか掴むことのできない「成長」を的確に描けている点だ。確かに明確な理由付けがされることなく進んでいるエピソードが多いが、宮崎駿はこれを感覚的な整合性をとることでなんら破綻なく展開できることを知っているのだろう。「説明できない何か」を文章ではなく映像に託すことを理解している人間のみ、この映画を作ることができるのだ。

 現存している多くのアニメとは違い、この映画は観客に媚びることがない(いくつかの憎らしいほど可愛らしいキャラクターを除けば)。各要素がどのように組み合わさり、どのように作用するのか。一人の人間がそれらをコントロールしたのだとすれば、これほど驚異的なことはない。
 エンディングロールが始まるたびに、私も千尋と同じように後ろ髪を引かれる思いで一杯になる。だが彼女と違うのは、この映画がある限り、何度でもあの不思議な世界に私たちは戻ってくることができるのだ。

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2017/07/19 (Wed) 不眠症

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原題    Insomnia
公開    1997年
上映時間  95分
製作国   ノルウェー

監督    エーリク・ショルビャルグ
脚本    エーリク・ショルビャルグ/ニコライ・フロベニウス

出演    ステラン・スカルスガルド
      スヴァーレ・アンケル・オースダール
      ビョルン・フローベリ


あらすじ
 北極圏に位置するノルウェーの街トロムソで、17歳のターニャという女生徒が殺害されて見つかった。母国のスウェーデンで不祥事を起こしノルウェー警察に異動したエングストロムと、その相棒ヴィクは捜査に当たることに。証拠品を餌に犯人を追い詰めるも、エングストロムは犯人と勘違いをし、ヴィクを誤射し殺してしまう。罪悪感にさいなまされたエングストロムは、白夜の続く街で眠りにつけないまま、犯人との接触を試みる。





鑑賞日   17年7月19日
鑑賞方法  DVD
評価    3.5点

レビュー
 ノルウェーの、それも北極圏という日本とは全く異なる環境下での刑事サスペンスです。主演は、近年マーベル作品などの超大作にも顔を出しているスウェーデン俳優のステラン・スカルスガルド。クリストファー・ノーランによるリメイク版『インソムニア』の方が何かと有名ですが、向こうにはない独特の緊張感がこの作品をユニークにしています。

 相棒を間違えて殺してしまい、その罪悪感から不眠症となる主人公ですが、劇中ではその罪を隠すために様々な隠蔽工作を繰り広げます。通常であれば浅はかで同情の余地もない行為ですが、不思議なことに彼の性格の不完全性が人間らしさにより厚みを持たせているのです。自分よりも若い女性を相手にすると、すぐに表には出なくとも、一体何を考えているのかはこちらには一目瞭然。スカルスガルドの程よい中年具合(この当時は40台後半)と、じっとりと渦巻く情念が絶妙にリアルなのです。主人公自身、そういった部分では犯人と大差ないことを自覚しており、それが物語の展開および彼の葛藤に大きな影響を及ぼしています。

 また、ひとつひとつの舞台設定も非常によく作り込まれていて、北欧ならではの描き方を見ることができます。スウェーデン人の警部がノルウェー警察に出向ということが実際にあり得るのか詳しくはわかりませんが、外国人である彼の警察内での位置付けなど、物語の大筋とは関係ない部分も大事にされていて、より現実感のある構成に寄与しているのだと思われます。

 ただ欠点がないわけではありません。例えば重要な要素である白夜と不眠症の描き方は、見ている側には意外と伝わりづらいのです。主人公の精神状態を露骨な映像で映し出すのは陳腐になってしまうからかもしれません。しかし内面にフィーチャーしているからこそ、時間の流れが悪い意味で掴みづらくなってしまい、彼の疲労感やストレスが見えてこないのです。
 さらに犯人の人物像が見えてこない点もマイナスとして挙げられるでしょう。主人公にフォーカスするあまり、犯人像は極めて薄く、言ってしまえばありきたりになっているのも事実です。セリフの少なさが裏目に出ている場面もいくつか見受けられました。

 とはいえ、男女間のゴタゴタというベタな事件が、陰鬱とした曇り空の中、静寂なシーンで切り取られることで、見事な心理サスペンスへと昇華されていることに違いはありません。一度は見て欲しい、そんな映画でしょう。

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2017/07/13 (Thu) 20センチュリー・ウーマン

20th_century_women.jpg


原題    20th Century Women
公開    2016年
上映時間  118分
製作国   アメリカ

監督    マイク・ミルズ
脚本    マイク・ミルズ

出演    アネット・ベニング
      ルーカス・ジェイド・ズマン
      グレタ・ガーウィグ


あらすじ
 1979年、カリフォルニア州サンタバーバラ。思春期の真っ只中にいる息子ジェイミーの今後が気がかりな母親ドロシーは、ジェイミーの幼馴染のジュリーと、写真家のアビーに面倒を見るよう提案する。彼女らを含む周囲の人々と接し、70年代終盤の文化に触れるうちに、ジェイミーには変化が起きていく。





鑑賞日   17年7月8日
鑑賞方法  映画館
評価    5点


レビュー
 2010年の『人生はビギナーズ』以来、6年ぶりとなるマイク・ミルズの脚本・監督作。前作がゲイであることを告白した彼の父親をベースにし、今作は彼の母親をモデルにした映画である。どちらも彼にとって非常にパーソナルな作品であることに変わりはないが、今回は子供時代のある一点のみを描き出すことで、前作にはなかった時代性や郷愁の思いを加え、より感動的な仕上がりとなっている。

 さて具体的なストーリーについて話していきたいが、上記にあらすじを書いてはいるものの、この映画には明確な起承転結があるわけではない。もちろん作中ではいくつかの“事件”と言えるものは何回か起きるが、それらはあくまで日常生活の範疇を出ることなく、観客に取っても起こりうる、ユニークながらもありふれた出来事として描かれる。むしろ大事にされているのは、その出来事を起こすまでの、もしくは起きたことによる登場人物の感情の動きや流れである。
 例えば、主人公の15歳のジェイミーは多感な時期もあってか、時折母親に反発し、彼女がシングルマザーであることを頻繁に指摘する。通常であれば、母子の関係を描く映画におけるターニングポイントとなりうるが、『20センチュリー・ウーマン』ではそういった安易な手法は取られない。こういった出来事は2人(あるいはその周囲を含む人々)の関係性の重要な蓄積のひとつであり、アネット・ベニングを始めとするキャストの繊細な演技が、映画全体、すなわち一時代が少年の成長にとって大きな影響を及ぼしたという事実を裏付けているのだ。
 またミルズ監督の素晴らしい点は、その感情が一種類ではなく、一人の人物の中に幾重にも重なった状態で表出されるという、本来であれば難解な表現をやってのけてしまう点だろう。もし人間がロジカルに行動するのであれば、どのような場合においても「A→B」という方程式は崩されることがないだろうが、実際のところ大きく違っている。相手の行動に対しての反応は、いくつもの矛盾した感情から生み出された行動の結果であり、それこそが一人一人の人間を個性的にしているポイントなのだ。思春期のジェイミーはこういった「矛盾」に裸で晒されているも同然だが、大人であるはずのドロシーやアビーについても実は同様のことが言える。むしろ彼女らは「大人である」という理性で感情を覆うことにより、子供よりも遥かに複雑な内面の変遷を経験することになる。これは現実においても真であり、それを実際に映画という媒体でほぼ完璧に投影できたのはこの映画が初めてではないだろうか。

 上記の普遍性もさることながら、序盤でも記載した通り、監督にとってパーソナルな映画である点もまた、魅力を高めるのに一役買っている。トーキング・ヘッズを先頭とし、キャラクターの代わりに言葉で訴えかけてくるサウンドトラックは、MV出身のミルズのビジュアルセンスと見事にマッチし、流れるたびに心を震わされる。79年という、アメリカ全体にとっても変遷期であることもミソだろう。レーガンという一時代を象徴する大統領ではなく、外交政策に翻弄されたカーターの演説をフィーチャーし、異なる時代に生まれた人々の反応を映し出すなど、成長において周囲の環境が大きく影響を及ぼすことをミルズは熟知している。繰り返し繰り返し、主要なキャラクターたちがナレーターとして各々の人生を語り、そのバックグラウンドから彼女らそのものが浮き彫りになって行く。これを観た人は、短い一夏の映画とは思えないほど、濃密な時間を過ごせることだろう。

 やはり『人生はビギナーズ』同様、多くを語ってくれる映画ではないため、些か面食らってしまう人もいるかもしれない。それでもなお、こちらまで熱が伝わってくるようなカラフルなサンタバーバラの情景や、生き生きと動くキャラクターの可笑しさは万国共通のものだろう。そしてこの映画の真意がわかった時、監督の領域を超え、観た者にとってパーソナルな映画になっているのだ。

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