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2012/11/17 (Sat) 思秋期(映画館で鑑賞)

思秋期

監督 パディ・コンシダイン
出演 ピーター・ミュラン
   オリヴィア・コールマン
   エディ・マーサン


あらすじ
 男やもめで失業中のジョセフは、酒を飲むと怒りを抑えられず、いざこざや暴力沙汰ばかり起こす日々。そんな自分に嫌気がさし、精神的にも疲弊しきっていたある日、明るく聡明な女性ハンナと出会う。ハンナは自暴自棄になっていたジョセフを癒し、2人は次第に打ち解けていく。しかし、ハンナもまた、心の中に人には言えない闇を抱えていた……。


評価 5点5点中)


レビュー
 「イン・アメリカ」の冴えない父親役だったパディ・コンシダインの初監督作。それも非常に優れた初監督作だ。もしかすると本年度ナンバー・ワンかもしれない。
 
 ジョセフは画面に映った時から苛ついている。彼の内部で煮えくりかえった何かがたぎっているのが、手に取るように分かる。その彼が愛犬のあばらを蹴って殺してしまう、というシーンから映画は始まる。何とも陰鬱な始まり方だ。
ミュランはジョセフの複雑な心情を、しかめっ面を少しずつ変化させて巧みに演じた。どのシーンでもほとんど怒っているが、その後彼が見せる哀しみには心を突き動かされる。そしてその彼の再生を願わずにはいられない。

 この後ジョセフはハンナと出会うのだが、前半はしばらく「いかにも」な展開だけが待っている。ハンナは夫からたびたび暴力を受けており、それを知ったジョセフは次第に心を開いていく。独立系の小作品にありがちな「救いの物語」だと思うだろう。だが「思秋期」はここから本領発揮する。その一つはジョセフの友人の葬式のシーンだ。”葬式”がこの映画でもっとも幸せに満ちあふれたシーンなのだ。悲しみながらも誰もが歌い、踊り、そして笑う。心が傷ついたジョセフも、アザだらけのハンナも本当に幸せそうだ。

 だがこの後明かされる真実が息を呑むほど衝撃的だ。この映画が他とは一線を画す最大の理由だろう。抑圧されたハンナの心の闇の深さに驚かされる。それでいて「自分でも同じ事をするだろう」という共感を呼ぶのだから、なおさらだ。それもハンナ役のコールマンの緩急つけた演技のおかげだろう。物静かで信心深い彼女が豹変したとき、それはあまりにリアルで見ている方も苦しくなる。エディ・マーサンが演じた夫の気味悪さは人の嫌悪感を煽り、DVという行動の陰惨さを浮き彫りにする。こんなに恐ろしく痛々しい関係はなかなか描けない。

 そう。この映画の登場人物たちは誰も彼もが変なのに、とても自然で観客の共感を呼ぶ。ジョセフが劇中で言う言葉にこういう物がある。「行動を起こすか起こさないかが、自分とハンナ側と世間側の違いだ」と。誰もが程度の大小はあれど、怒りを抱えそれを発散したがっている。ジョセフとハンナはその象徴であり、私たちの代わりに”行動”に移した。それは非常に大きな代償を伴う行動ではあるが、ある意味で救いでもある。だがいつまでも同じでは、結局救われない。自己嫌悪に陥り、また繰り返すだけだ。

 究極の事態に直面したとき、彼らがどう動くのかは自分の目で見て欲しい。とても静かでおだやかだが、真の感動を呼び起こしてくれる。人間が持つ様々な感情を、一つの映画にどうやって押し込めたのか。隙のない素晴らしい映画である。


↓劇中のBGMも素晴らしかった。これはその一つ。

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