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2013/02/09 (Sat) ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日(映画館で鑑賞)

ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日

原題   Life of Pi
公開   2012年(アメリカ)
上映時間 127分

監督   アン・リー
製作   アン・リー/ギル・ネッター/デヴィッド・ウォマーク
脚本   デヴィッド・マギー
原作   ヤン・マーテル『パイの物語(Life of Pi)』

出演   スラージ・シャルマ···パイ・パテル
     イルファーン・カーン···パイ・パテル(成人)
     タブー···ジータ・パテル(パイの母)


あらすじ
 1960年インド・ポンディシェリに生まれた少年パイは、父親が経営する動物園でさまざまな動物たちと触れ合いながら育つ。パイが16歳になった年、両親はカナダへの移住を決め、一家は動物たちを貨物船に乗せてインドをたつが、洋上で嵐に遭遇し貨物船が沈没。必死で救命ボートにしがみついたパイはひとり一命を取りとめるが、そこには体重200キロを超すベンガルトラ「リチャード・パーカー」がいた。





評価:4.5点(5点中)


レビュー
 この映画の原作「パイの物語」は既に数多くの賞を受賞している有名な小説らしく、あのオバマ大統領も原作者に手紙を書いたという。
 事実、様々な箇所に、小説を原作に持つ映画特有の展開が見られる。ストーリーは、成人したパイがカナダ人小説家に自分の生い立ちを回想という形で話し始める、というのが大まかな骨子である。だから序盤からいきなりサバイバルが始まるわけではなく、開始30分程度は小話が続く。これら一つ一つの話はユーモアにあふれ、見る人を飽きさせない。しかし全体としてみると、映画の中で最も面白いのは当然パイの漂流シーンであり、2時間ちょっとの映画としては小話があまりにも尺を取りすぎている。ストーリー上重要な役割を果たすものもあったが、いくつかは明らかに必要の無いものだった。小説と映画は違う物だから、どのエピソードをピックアップするべきか見極めないと、伝えるべきテーマがぼやけてしまう。まあこの映画に関してその点は心配いらないが。

 さて、物語の中核を成すパイと「リチャード・パーカー」の漂流だが、この部分は文句なしに素晴らしい。映像面では3Dを存分に生かし、迫力がありながらも繊細で美しい映像を生み出している。ある意味で主役とも言える「海」は生命を容赦なく奪う存在でありながら、それでいて息をのむほど綺麗だ。とてもCGとは思えないが、特に海の中から映し出された映像は非常にリアリティがある。
 そして何と言ってもCGのトラ「リチャード・パーカー」を忘れてはなるまい。目をぎらつかせ、歯を剥き出して吠える様子は本物のトラにしか見えない。時折見せる“感情が宿った”かのような場面でも、ベタに人間臭くならず、あくまで動物としてのトラとしての動きを貫いているから、突飛なはずのストーリーを血が通ったリアルな映画にしている。

 主演のスラージはほぼ演技経験皆無の素人とは思えない演技を披露する。3つの宗教を信仰するパイは精神的な存在である神を信じ続けると同時に、サバイバルブックを見ながらなんとか生き延びようとする。スラージは彼自身が持つ生来の魅力により、相反した要素を持つパイをCG相手に演じきった。彼が「リチャード・パーカー」と真っ向から対峙するシーンは圧巻の一言である。

 こういった様々な要素が見事に組み合わさったことも大きいが、「ライフ・オブ・パイ」が素晴らしいのはそのテーマにある。このテーマが生きたからこそ、非現実的なストーリーや一見単調に思えるサバイバルに深みが生まれたのだ。
 そのテーマは何かと言うと「生と死」そのものである。今まで様々な映画がこれを描いてきたが、そのほとんどは「殺人事件」や「不治の病」など何か別の物を媒介としていた。しかしパイが直面する事態は“生きるか死ぬか”という究極の選択そのものであるのだ。「ライフ・オブ・パイ」だってサバイバルを通しているではないか、と思うかもしれないが一度でもこの映画を見れば私の言いたいことが分かる。
 そもそもパイはそこそこ裕福な中流家庭出身だから、普段の生活に置いては生にしがみつく必要が無い。その代わり彼は3つの宗教を通じることで、普段は感じることのできない生命を感じ取ろうとした。そんな彼が海の中に1人(と1匹)放り出されたら、死を待つしか無い。それなのに彼はなんとか異常な環境に適応しようとする。その彼の変化のプロセスが丁寧だから、なんの疑いも無く物語を信じることができる。彼とトラが食料を求めて争うシーンも、その迫力はパイの「生き延びたい」という心が生み出している。まさに「生きる」ことをストレートに見せたのだ。
 後半部分で彼が到達するある島も、それそのものは残酷なファンタジーで色塗られているのに、パイの行動がリアルだからただの空想には終わらない。そして自分が遭遇する様々なものたちを“神”によるものとするパイの語りにも、説得力が生まれ、宗教の壁を越えた“神”を観客も確かに感じることができるのだ。

 最も素晴らしいのはパイがカナダ人作家にあることを問いかける場面。彼はこの生命力にあふれた美しい話とは別に、血なまぐさいリアリティにあふれたもう一つの「話」をする。こっちの方がいかにも“サバイバル”らしく、普通ならこちらを信じるところだろう。しかもそれぞれの動物が個々の人間に置き換えられていて(はたまたその逆なのか)、ほんの少し話すだけなのに、この「話」にも不思議な説得力がある。
 ここで面白いのはパイが「リチャード・パーカー」を自分自身に置き換えている点だ。ここで観客は初めて知ることになるのだが、パイにとって「リチャード・パーカー」とはすべての物事の象徴である。災難、サバイバル、自然の脅威、仲間、家族、そして自分。「リチャード・パーカーがいなければ、生き残れなかった」という言葉に重みがあるのはそのせいなのだ。
 それらを知った上でパイはカナダ人作家だけでなく、観客にまでカメラを通して問いかけてくる。「君はどっちの話が良いと思う?」
 だが私たちはこの物語から希望を捨てないことを学び、そして感動させられた。どっちが良いかは誰にとっても明白だろう。どちらが正解かなどは関係ない。どちらの話がパイの人生に影響を与えたのか、そして私たちの心をふるわせたのか、それが問題なのだ。

 だからこそ物語の締めくくりは、いささか陳腐にも感じられる。だがパイが神の存在を感じて改めて生きること、そして様々なものとの出会いを再認識したというのも悪くない。
 実は「リチャード・パーカー」はもう一つ、この「出会いと別れ」も象徴している。終盤パイは静かに涙を流し、こう言った。「人生に別れはつきものだ。だが本当に悲しいのはさよならを言えないことだ。」これほど心を打つ言葉があるだろうか。

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