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2013/02/10 (Sun) ヒストリー・オブ・バイオレンス(家で鑑賞)

ヒストリー・オブ・バイオレンス

原題   A History of Violence
公開   2005年(アメリカ)
上映時間 96分

監督   デヴィッド・クローネンバーグ
製作   クリス・ベンダー/J・C・スピンク
脚本   ジョシュ・オルソン
原作   ジョン・ワグナー『ヒストリー・オブ・バイオレンス(A History of Violence)』

出演   ヴィゴ・モーテンセン ···トム・ストール/ジョーイ・キューザック
     マリア・ベロ     ···エディ・ストール
     エド・ハリス     ···カール・フォガティ


あらすじ
 田舎町の小さなダイナーを営むトム・ストールは妻と高校生の息子、そして娘と共に穏やかな日々を送っていた。
 そんなある日、拳銃を持った強盗がダイナーを襲うが、驚くべき身のこなしでトムは2人を撃退し、一夜にしてヒーローとなった。
 それから数日後、片目のえぐれた男がダイナーに現われ、トムに親しげに話しかける。彼の本当の名前はジョーイで、フィラデルフィアのマフィア、リッチー・キューザックの弟だと言う。トムは否定するが、家族は次第にぎくしゃくし始めて…。





評価:5点5点中)


レビュー
 同名グラフィック・ノベルをデヴィッド・クローネンバーグが映画化した。私はそちらのグラフィック・ノベルの方は以前から持っていて、幾度となく読んでいるお気に入りのコミックだ。物語上の派手さは原作の方に軍配が上がるだろう。だが衝撃を受けたのはこの映画版の方だ。

 まず私が気に入ったのは、原作を持つ映画にありがちなミスを上手く回避している点だ。コミックではトムが家にやってきたマフィアを撃退した後に、訥々と“真実”を語り始める。コミックではこれだけでほぼ丸々一章分使っている。だが映画でこのシーンを長々と描くわけにはいかない。あえて過去の回想シーンを一切出さないことで、ストーリーそのものをシンプルにしている。これにより映画全体にスピード感が出て、本来のテーマも明確になる。そして何より、具体的な過去を明かさないトムの不気味さが一層増すのだ。

 実際、序盤の展開以外ほとんどの設定が原作と違う。同じなのは主人公と妻の名前(名字すら違う)、そして「トムが過去と決別する」という大まかなストーリーラインだけだ。しかもこの脚本が本当に外枠だけが原作と一緒で中身は全く違う。
 どちらも「暴力の連鎖(歴史)は続くのか」という点では同じだ。だがアプローチは正反対と言っていい。
 原作でのトムは自らの真実をすべての人に話し、過去を忘れようとするトムを周囲の人は理解する。そして家族を救うために、昔の友達を救うために彼はもう一度だけ銃を握ることを決意する。ここでのトムはあくまで平和を望む悲しきヒーローであり、何よりも家族を愛する良き父親だ。当然物語もハッピーエンドで終わる。
 しかし映画でのトムは具体的には何も語らず、周囲の人どころか家族さえ彼を敬遠する。敵に遭遇したときの彼の表情からはまるで暴力を楽しんでるかのような印象すら受ける。彼自身、二重人格を患っていることをほのめかす。トムは潜在的な殺し屋なのだ。けりを付けるのも、家族の幸せそのものより、理想的な家庭を望む彼のために行った行動と言える。

 このように主人公の性格を大幅に変更することで、映画では「血で血を洗う」行為の生々しさを浮き彫りにしている。それでもこの中で息をのむシーンは凄惨な暴力ではなく、家族間に走る亀裂だ。学校でいじめっ子を殴った息子のジャックに「暴力を振るって言い訳じゃない」とトムは叱るが、当然ジャックは彼に反発する。トム自身が暴力を暴力で解決したからだ。そのジャックの言葉にトムは戸惑いを隠せない。息子にそう言われたこと、そして自分の中のジョーイの存在に気づいてしまったせいだ。
 エディがトムに「近づかないで」というシーンも凄まじい。エディがトムをビンタした後に、トムは彼女の首を絞めそうになり、2人はそのまま行為に及ぶ。だがそれは以前のトムのような愛情に満ちたものではなく、荒々しくて目を反らしたくなるようなものだ。クローネンバーグは暴力が性とつながることを熟知している。だからこそビジュアル的に凄惨な物より、こういった精神的に嫌悪感を抱く場面を作り出せる。

 もちろんこの映画に隙が無いのは、素晴らしい俳優陣によるものでもある。
 ヴィゴ・モーテンセンは、原作では表立って描かれなかったトムの二面性を圧倒的な演技力で表現している。序盤の彼は見るからに温和な好人物であり、誰もが彼を信用している。その彼が2度目の事件に遭遇した後は豹変する。暴力を振るうことを厭わず、その目は冷酷そのものだ。ジャックが人を撃った後に、トムはじっと彼を見つめる。その目からは暴力を肯定するジョーイと、父親を助けるためとはいえ人を殺した息子を咎めるトムの感情が入り交じっている。一言も発さずに、これだけの感情を込めたのは見事としか言いようが無い。
 彼の家族も無くてはならない存在だ。妻のエディを演じたマリア・ベロは時折演技がオーバーなこともあるが、ほとんどは上手くいっている。暴力から生まれる哀しみは彼女が見せたといってもいいだろう。トムへの愛情が少しずつ恐怖に変わっていく様子も自然で違和感が無い。
 アシュトン・ホームズは父親の存在に戸惑う様子を上手に演じている。彼も父親が人を撃ったことにより、心の中で確実に変化を起こしている。それでいて迷いを隠せない「普通の人間」らしさを残しているから、トムの残酷さが一層際立つ。
 彼を付け狙うフォガティは原作のトリーノの要素を受け継いでいるが、エド・ハリスはそこにより落ち着いた紳士的な要素を加えている。マフィアとしての冷酷さが克明になり、映画全体のトーンを上手く落とし込んだのは彼の功績だろう。
 そしてジョーイの兄、リッチーは言うまでもない。ウィリアム・ハートはこの演技が評価されアカデミー助演男優賞にノミネートされたが、それも納得だ。出演シーンは終盤の数分であるにもかかわらず、寡黙なモーテンセンと完璧に渡り合っている。彼とは対照的に、マフィアの中で窮地に立たされた兄の苦しみを話すことで表現している。兄弟でありながら、ジョーイのことを異質な存在と見なし、幼い頃から憎しみを抱いてきた。その憎悪が言葉の端々に表れ、聞く者をぞっとさせる。

 これらすべてが完璧に作用し、一切の無駄を省いた映画版「ヒストリー・オブ・バイオレンス」は原作をも超えている。自ら犯した罪により、築き上げた幸せが崩壊していく。それを取り戻すためにトムが取った行動は決別したはずの暴力であった。こんな皮肉な話は無い。エンディングで食卓につく家族の顔には以前のような楽しげな表情はない。すべては崩れ去ったのだ。暴力の連鎖のもとに。

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