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2013/02/14 (Thu) ルビー・スパークス(映画館で鑑賞)

ルビー・スパークス

原題   Ruby Sparks
公開   2012年(アメリカ)
上映時間 104分

監督   ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファリス
製作   アルバート・バーガー/バート・リプトン/ロン・イェルザ
脚本   ゾーイ・カザン

出演   ポール・ダノ    ···カルヴィン・ウィアフィールズ
     ゾーイ・カザン   ···ルビー・スパークス
     クリス・メッシーナ ···ハリー


あらすじ
 19歳で天才作家として華々しくデビューしたものの、その後10年間にわたりスランプに陥っているカルヴィンは、夢で見た理想の女の子ルビー・スパークスを主人公に小説を書き始める。するとある日、目の前にルビーが現れ、カルヴィンと一緒に生活を始める。カルヴィンはルビーが自分の想像の産物であることを周囲に隠そうとするが…。





評価:3.5点(5点中)


レビュー
 レビューの前に少し余談を。今日がバレンタインデーであることは周知の事実であろう。私はよりにもよって、この2月14日に、1人で、ラブロマンス映画を見に行った。こんな私を笑ってくれ。笑ってくれないと辛いからさ…

( ´,_ゝ`)プッ

 とまあ、おふざけはこの程度にしといて。
 ジョナサン・デイトンとヴァレリー・ファリスはあの「リトリ・ミス・サンシャイン」の監督コンビである。その2人が作った映画なのだから、否が応でも期待してしまう。

 ストーリーにも興味が惹かれる。スランプに陥った元・天才作家が自分の創作した女の子に恋をする。しかもその子が実在してしまった。自分の思い通りに人を動かせたらどうなるのか、という上手く調理すれば最高の物に成り得る良い題材だ。
 だがこの「Aクラスの食材」をこの映画、というより脚本は上手く料理できたとは言いがたい。
 
 マインド・コントロール的な要素を暗くなりすぎずに描いた点は良かったと思う。楽観的な映画の雰囲気にぴったりだし、そもそも監督たちが得意とする「シリアスなのに、明るく振る舞う人々」には即している。それに終盤で見せるカルヴィンとルビーの喧嘩は今までの雰囲気とは一転、カルヴィンの異常性を最大限に引き出している。ものすごい早さでタイプライターを打ち、一瞬にやりと笑うその顔にはぞっとさせられる。それでいて、後悔の念も顔に浮かぶから、人間性が失われず、観客の共感を呼ぶ。

 そのカルヴィンをポール・ダノが好演している。次作が書けないと言ってセラピーに通い、ボビーというぬいぐるみを抱きしめる。女性に対する考え方もかなり独善的で、ルビーに言わせると「堅物」である。こんな引きこもりまがいを愛すべき人物として演じられるのは確かに彼しかいない。ひょろっとしていて、肌は青白く、完璧に役にフィットしている。登場人物の中でも、唯一リアルな感情が込められている。あえてタイプライターという昔ながらの方法で執筆に励む彼の姿は、狂人的でありながら「天才」と呼ばれ続けた者の苦悩も垣間見える。

 だが問題なのは、「ルビー・スパークス」その人だ。「女の経験ゼロ」のカルヴィンが作り出したからかもしれないが、彼女はびっくりするほど魅力的でない。いや、演じているゾーイ・カザンはチャーミングだし、けっして鼻につくというわけでもない。しかしカルヴィンが彼女にそこまで入れ込む理由が分からないのだ。ある意味では「カルヴィンの妄想の産物」としてのリアリティは保っているかもしれないが、彼女はこの映画のヒロインでもあるのだ。ハッとさせられる(先ほどの“喧嘩”のシーンなど)もあるが、ほとんどは薄っぺらいものしかない。

 この問題は彼女だけに始まったものではなく、他の登場人物にも言える。リアリティが無い、というか生活感が皆無なのだ。「空想の産物が実生活に登場する」という話を生かすには、“実生活”との落差が大事なのだ。どちらも創作物に見えるようでは、惹き付けるようなストーリーにはならない。

 とはいえ、全体として見るとこの映画は悪くない。むしろ良い方だ。主演の2人はそれぞれの役柄に忠実だし、インディペンデント系らしいカメラワークも嫌いじゃない。音楽の使い方をもう少し上手くすれば、忘れられないシーンもできたと思う(ゲームセンターの場面など)。要するに色々と惜しいのだ。

 その“惜しい”脚本にも実は完璧なシーンが一つある。それはラストなのだが、カルヴィンとルビーの会話が絶妙なのだ。詳しく言うつもりは無い。ルビーが何気なくする会話の一つ一つが二重の意味を持っているのだが、それが非常に巧みなのだ。カルヴィンの心情も手に取るように分かる。まさに理想的なエンディングと言えるだろう。

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