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2018/04/09 (Mon) ブルックリン

brooklyn.jpg


原題   Brooklyn
公開   2015年
上映時間 112分
製作国  イギリス/カナダ/アイルランド

監督   ジョン・クロウリー
脚本   ニック・ホーンビィ
原作   コルム・トビーン『ブルックリン』

出演   シアーシャ・ローナン
     エモリー・コーエン
     ドーナル・グリーソン


あらすじ
 1951年、アイルランドの小さな町に住むエイリシュは仕事にあぶれ、仕方なしに地元の食料品店で働いていた。そんな彼女の将来を案じた姉の計らいにより、エイリシュは単身ニューヨークへと渡米することになる。初めのうちは慣れない生活とホームシックから泣いてばかりの日々だったが、時間が経つにつれて少しずつ異国の地に溶け込んでいくエイリシュ。そのうちイタリア系のボーイフレンドもできて順風満帆と思われた新生活だったが、ある日故郷から思いもよらない知らせが届く。





鑑賞日  18年4月9日
鑑賞方法 DVD
評価   4.5点


レビュー
 休んでは書き、休んでは書きを続け、気づけば9年目となる当ブログ。人は思い出したように「自分は年をとった」と呟きますが、10年近い歳月が経つとほとんど別の人間といっても過言ではないでしょう。近しい人間しか見ていないこのブログも今思えば、将来の自分にその時の自分の痕跡を見せるために書いていたのかもしれません。
 決まったルールに従うのが苦手な性分ですのでなかなか難しいとは思いますが、ここからは1日1つは映画を見てレビューも書いていけたらと思います。


 さて今回鑑賞した『ブルックリン』は、2015年アカデミー作品賞ノミネートの中で唯一私が劇場での鑑賞が叶わなかった作品です。そのほかのノミネート作品と比較するとインパクトといった意味では少々弱い映画かもしれませんが、そこに込められたテーマは近年の傑作群でも随一でしょう。

 50年代というアメリカが(80年代の次に)最もアメリカらしかったとも言える時代を舞台にし、その象徴とも言えるニューヨークをメインに据えながらも、いつもの“ホームグラウンド”といった雰囲気は何処へやら、どことなく異国情緒の漂う雰囲気に仕上がっているのが特徴的です。それはもちろん、子供時代をアイルランド南部で過ごしてきた生粋のアイリッシュである主人公の目線がそのまま投影されているからです。若い女の子らしいビジョンを的確に捉え、大局的な視点よりも小物やファッションデザインに焦点を当てることで、大都会にやってきたことを言葉ではなくビジュアルで観客に示している点がたまらなく魅力的です。どこか垢抜けない身だしなみから世界の最先端に生きる女性へと少しずつ変わっていく主人公自身の様も、決して劇的な変化ではなく、段階を追ったものになっていることで内面の変化にも説得力を持たせています。

 もちろんこの繊細な描写は、何も小道具に頼り切ったものではなく、主演のローナンあってこそのものです。
 いわゆるアイルランド系移民1世となる彼女の物語は、本来であればその特有の時代背景や民族性が前提となっている物語です。もちろんそういった側面での演出…英語という共通の言語を持ちながらそこに明確な境界線がある点や、自らのルーツへの捉え方がイタリア系2世もしくは3世のボーイフレンドとは異なる点などの演出も冴え渡っています。ですが、この映画について最も評価すべきはその固有性ではなくむしろ普遍性にあるのです。若者が先行きの見えない故郷を出て新天地で暮らし、そこに新たな人生を見つけていく。これは何も50年代のアメリカ移民だけの話ではなく、いつの時代でも共通の物語ではないでしょうか。それこそ、地方から都会への人口流入が幾度となく議論されている現代日本においても全く関係のない話とは言い難いものです。
 そういった住み慣れた場所を離れる恐怖、次第に忘れていく郷愁の思い、一概に割り切ることのできない複雑な思いをローナンは言葉を発さなくとも見事に表現しました。他の役者たち、特に男性陣も素晴らしいのですが、彼女の現実をも超えた演技があまりに突出していて、ほとんどの観客は上映中彼女だけを見ることになるのではないでしょうか。主人公が口にする選びに選び抜かれたであろう言葉のトーン、ほんの少しだけ動く視線。そういった一つ一つの動きに何一つ作り物がないと思わせてしまう。極端な話、演技というフィクションでしかない存在にそれを込められるのは歴代の名優たちにも匹敵する技量ではないでしょうか。

 惜しむらくは脚本にいくつかの詰めの甘さが見えてしまうことです。主人公と姉との関係性は前述の故郷に関する本作のテーマとも深く関わっている部分ではありますが、この部分に関しては共感を呼ぶものとは言い難いでしょう。もちろん最後まで見ればなぜお姉さんがエイリシュのために色々と工面してくれたのかは一目瞭然なのですが、残念ながらこの映画においてそれは個々のキャラクターの関係性を描写して初めて浮かび上がるのです。なぜエイリシュにとってお姉さんが大きな存在なのか、故郷の最大の心残りなのか、お姉さんの内面描写が無い以上こちら側としては推察の域を出ません。
 そして終盤、主人公が最後の決断を下すきっかけとなる場面。それまでは2つの居場所に揺れ動かされる心情を繊細すぎるほどに描いていたにも関わらず、いわば敵となる人間を登場させることで急転直下の展開を生んだのは性急だったという他ありません。故郷の人々は決して悪人ではなく、ただ無意識のうちに主人公を緩やかに縛り付けていることがミソであり、何も彼女を痛めつけることを心待ちにする意地の悪い人々ではないのです。(正直な話、映画に描かれていないだけで、どう考えてもニューヨークの方が意地汚い人間が多いのは誰もが認めるところでしょう。)

 こういった些細ではありますが、いくつかのほころびが本来描くべきテーマを濁らせてしまったのはとても勿体無く感じられました。
 それでもなお、その最後の決断の後の場面は紛れもなく映画史に残すべき名場面です。場所が大事なのではない。心の拠り所がどこにあるのか。そしてその拠り所こそ、自分にとっての故郷なのだ。エイリシュが力強い眼差しで語りかけるその場面で、私たちは一人の女性の強さと、あまりに優しいそのメッセージに心打たれ、涙してしまうのです。

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