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2015/01/16 (Fri) グリース

グリース


原題   Grease
公開   1978年
上映時間 110分
製作国  アメリカ

監督   ランダル・クレイザー
脚本   ブロント・ウッダード/アラン・カー

出演   ジョン・トラボルタ
     オリビア・ニュートン=ジョン
     ストッカード・チャニング


あらすじ
 夏休みの旅行先で出会った高校生のダニーとサンディは一目で恋に落ちるが、夏が終わると同時に別れなければならなかった。しかしダニーの通う高校に、当のサンディが転校してくることになった。ダニーを思い続けていたサンディは突然の再会に喜ぶが、実はダニーは学校でも有名な不良グループのリーダーであった。仲間の前ではカッコ悪い真似はできないと思い、ついついダニーはサンディに失礼な態度をとってしまう。それに怒ったサンディは•••。




鑑賞日  1月16日
場所   家
評価   3.5点


レビュー
 「サタデー・ナイト・フィーバー」と共に、ジョン・トラボルタの絶世期を代表する言わずと知れた名作である。50年代という、半世紀以上も前の時代を描いたこの作品を現在の視点から見るとどうであるのか。

 まず言わなければならないのは、全体としてダサいことは否めない、ということである。序盤において、友人に名前を呼ばれたジョン・トラボルタが振り返り、不敵な笑みを浮かべる時点で笑いを禁じ得ない。それどころか、全体として不良たちのテンションは異常に高く、時として観客がついていけないぐらいだ。そこが欠点でもあるのだが、ある意味でこの映画の最大の武器でもある。
 例えばストーリーだが、そのような雰囲気が全体を包み込むおかげで、限りなく大味であり、サイドストーリーはあれど、次の瞬間には全てが解決している。それが主演2人以外の深みに欠けるキャラクターたちを余計に空回りさせているのだ(妊娠騒動など良い典型だろう)。しかし、それが逆に「グリース」を最高に楽しいミュージカルにしているとも言える。70年代から見た50年代とは、映画製作時に大人であった人間たちの青春時代でもあり、何も考えずに友人たちと騒ぐことができた日々への郷愁とも取れるのだ。だからこそ、深いことを考えずにひたすらその瞬間を楽しもうとする登場人物たちが不思議と魅力的に映るのである。

 ただ、そのストーリーの枠組みをしっかりと支えているのは、間違いなく主演のジョン・トラボルタとオリビア・ニュートン=ジョンの2人であろう。トラボルタは相変わらずキレのいいダンスを披露してくれるし、ニュートン=ジョンは透き通るような歌声を聴かせてくれる。
 そんな2人がジレンマを抱えながらも、少しずつ歩み寄っていく様がなんとも愉快である。達者な彼らの演技があるからこそ、不良の男子が優等生の女の子と恋をするという典型的なラブストーリーがちっとも陳腐に思えないのだ。
 そんな彼らの思いをのせた数々のナンバーも、一度聞いたら忘れられない曲ばかりだ。言葉にならない思いを、あえて大げさな歌にしてしまうという、ミュージカルの特性も見事に生かしている。それが繊細な心の不良や、お堅い自分に不満を持つ優等生を親しみやすく、誰もが好感を持つキャラクターに仕上げているのだ。

 馬鹿らしい部分も多くあるが、見終わった後に幸せな気持ちでいっぱいになることは請負だ。最後にはダサいと思っていた彼らの姿に憧れてしまう自分がいるのである。

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2015/01/01 (Thu) ゾディアック(劇場公開版)

ゾディアック


原題   Zodiac
公開   2007年
上映時間 158分
製作国  アメリカ

監督   デヴィッド・フィンチャー
脚本   ジェームズ・ヴァンダービルト
原作   ロバート・グレイスミス『ゾディアック(原題:Zodiac)』

出演   ジェイク・ジレンホール
     マーク・ラファロ
     ロバート・ダウニー・Jr


あらすじ
 全米を震撼させた「ゾディアック事件」という実際の事件を映画化。1969年より「ゾディアック」と名乗る男による殺人がサンフランシスコで頻発し、さらにその人物は事件に関連した手紙を新聞社に送りつけてきた。手紙を受け取ったサンフランシスコ・クロニクル紙の記者ポールと同僚の風刺漫画家ロバートは事件に並々ならぬ関心を寄せるが……。





鑑賞日  1月1日
場所   家
評価   4.5点

レビュー
 あの「ダーティハリー」の犯人、スコーピオンのモデルともなった実在の事件ゾディアックの映画化である。この時、デヴィッド・フィンチャーは5年ぶりの監督作品であったというが、心配するどころか、「よくできたB級映画の監督」から遥かに進化して戻ってきたようだ。

 連続殺人という残虐な事件をモチーフにしていながら派手さは無く、映画のトーンはむしろ冷静さを極めている。残酷な場面もいくつかあるが、“ゾディアック”が起こした60年代後半から70年代前半までの事件以外はむしろ頭脳戦をメインに描いているところは英断である。これ以前の監督なら、インパクト重視でより生々しく映し出したところだろう。

 脚本においても、非常に組み立てが難しかっただろう。「未解決」であることが分かっている以上、通常のミステリー・サスペンス映画で得られるクライマックスのカタルシスは望めないだろう。では、映画として成立させるにはどうすればいいのか。選ばれた要素は事件の衝撃性よりも、「犯人が不明である」という不気味な事実、そして「ゾディアック」に取り憑かれていく周囲の人間の狂気であった。
 それを支えるのはもちろん役者たち、特にジェイク・ジレンホールとマーク・ラファロは出色の演技だ。ロバート・ダウニー・Jrもなかなか達者だが、彼のいつものキャラクター(というより、低迷期の自分自身)を演じていて良くも悪くも一定している。
 それに対し、ジレンホールとラファロは抑制された演技ながらも、内に秘める「ゾディアック」究明への渇望をはっきりと体現している。ラファロは刑事としての正義感か、それとも犯人への怒りなのか、他の刑事が捜査を降りても執念深い調査を続けていた。時折冗談を挟みつつも、どんな時でも事件のことが頭を離れず、目は常に血走っている。これを狂気と言わずしてなんと言おうか。
 だが真の主役であるジレンホールが活躍するのは彼とは反対に後半である。前半部での彼はパズル好きの奇妙なオタクであり、「ゾディアック」の“ファン”の一人でしかない。いつでも犯人の暗号文を持ち歩いている時点で狂気じみているが、後半の変わりぶりに比べればまだマシである。部屋で一人、「ゾディアック事件」に関する山のような資料を漁り、誰の利益になるかもわからない事件を解明しようとするのだ。
 狂気は狂気でしか迎え撃つことができない。それに耐えられないものは、ロバート・ダウニー・Jrが演じたライターのような末路にたどり着くことになる。答えのない問題に対して、一つの回答を提示したこの映画は新しいミステリーを指し示した。

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2014/12/31 (Wed) インターステラー

インターステラー


原題   Interstellar
公開   2014年
上映時間 169分
製作国  アメリカ/イギリス

監督   クリストファー・ノーラン
脚本   ジョナサン・ノーラン/クリストファー・ノーラン

出演   マシュー・マコノヒー
     アン・ハサウェイ
     ジェシカ・チャンスティン


あらすじ
 近未来、地球規模の環境変化が進み、食糧難に陥っていた人類はその多くが農業によって生計を立てていた。そんな中、元エンジニアであるクーパーはある日、娘マーフィーの部屋で謎の暗号を解読する。それが指し示していたのは秘密裏に再建されたNASAの基地であった。そこでクーパーは宇宙で新たに発見された未開地へ旅立つミッションにクルーの一人として選ばれる。全人類の救済と愛する家族との再会の間で揺れ動くクーパー。悩み抜いた果てに、彼は家族に帰還を約束し、前人未到の新天地を目指すことを決意して宇宙船へと乗り込む。





鑑賞日  12月30日
場所   映画館
評価   5点


レビュー
 ダークナイト三部作も終わり、クリストファー・ノーランにとってインセプション以来のオリジナル作品である。批評家からの評判も絶賛、というわけではなくそれなりに良い程度だったので、正直な気持ちとして期待はしていなかった。だが私の予想とは真逆の結果だったのだ。

 まず書かなくてはいけないのは何よりもその映像美であろう。物理学者のキップ・ソーンから指導を受けて作り上げたワームホールやブラックホールの描写は真新しく写り、IMAXで見たこともあってか本当に宇宙空間にいるような気分にさせられる。ただし視覚効果担当がインセプションと同じダブル・ネガティブであったせいか、唯一そのインセプションとだけ似た印象を受けてしまった。それでもなお、静閑としていながらSF大作としての迫力と両立させている点は見事である。

 そして俳優陣。主演のマシュー・マコノヒーは、「家族への思い」と「宇宙への抗えない魅力」の間で苦悩する無骨な父親を演じた。監督が「MUD」での彼の演技を見てオファーをかけたのが納得できるように、宇宙が舞台でありながら開拓時代のカウボーイを思わせるようなマコノヒーのスタイルは従来のSFとは一線を画す。
 アン・ハサウェイもアカデミー賞を受賞した「レ・ミゼラブル」よりもずっといい。物語のセンチメンタルなトーンと相まって時折過剰にはなるものの、大いなる使命と愛した男への愛情に揺れる彼女の演技は真に迫っている。その他の定番の役者たちも、手堅いタイプを揃えているからか非常に安心して映画を見ることができる。
 そんなメンツの中で、ほとんど新人と言えるマーフィー(幼少期)役のマッケンジー・フォイは一際目を引いた。宇宙に旅立つ父親に対して、寂しさゆえに反抗心を露わにするマーフィーの演技は繊細さが要求される。少しでもすれば、ただのわがまま娘になってしまうところを、思春期に差し掛かった少女の父親(しかも自分に似た性格である)への複雑な思いを完璧に表現して見せた。冒頭部の安っぽい展開はほとんど彼女のおかげで救われていると言える。

 脚本に関しては賛否両論あるだろう。科学的考察が厳密になされたと言われるクライマックス直前までのストーリーに対し、当のクライマックスはある一種のファンタジー、おとぎ話に落とし込めてしまったとも言えるのだ。物語全体を付きまとっている「泣かせる雰囲気」が尾を引き、このポイントで耐えられなくなる人も間違いなくいる。
 だが私はこの点こそ、「インターステラー」で最も優れている部分だと思う。自然破壊を続ける人間への警鐘や、新たな世界を築く上での争いなどと言った、この手の大仰しいSFでありがちなメッセージ性を押し売りせず、宇宙へ旅立つことの夢や微視的とも言える人間愛などを押し出した作品など、これほどの規模の映画であっただろうか。父親の子供への愛情を的確に描き、それをSF大作のクライマックスに持ってくるなど誰にでも考え付くアイデアではない。だからこそ、エンディングは幸福に満ち溢れていながら同時に悲しくもあるのだ。

 センチメンタリズムに陥ることはありながらも、壮大さと繊細さを並立的に描き切った「インターステラー」は非常に勇気ある作品だ。まさしく、今年度最高のSF映画と言える。

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2014/12/29 (Mon) ボーン・アイデンティティー

ボーン・アイデンティティー


原題   The Bourne Identity
公開   2002年
上映時間 119分
製作国  アメリカ

監督   ダグ・リーマン
脚本   トニー・ギルロイ/ウィリアム・ブレイク・ヘロン
原作   ロバート・ラドラム『暗殺者(原題:The Bourne Identity)』

出演   マット・デイモン
     フランカ・ポテンテ
     クリス・クーパー


あらすじ
 銃で撃たれた男がマルセイユ沖で救出される。無事に回復したものの、彼は自分の名前はおろか、撃たれる前の記憶を一切失っていた。彼は自らの正体を探るため、皮膚に埋め込まれていたレーザーポインターが示したチューリヒ相互銀行へと向かう。そこにあったのは大量の札束と銃、そしていくつかの偽造パスポート。その後、彼は自分の命を狙ったのが自分のいた組織であったことを知る。





鑑賞日  12月28日
場所   家
評価   4点


レビュー
 それまで弟分のようなキャラクターが多かったマット・デイモンを、マッチョなアクション俳優としても素晴らしいことを証明した作品である。実際、非常に見応えのある硬派なアクションに仕上がっているのは、間違いなく彼によるものだ。スピーディなチェイスから、緊張感のある銃撃シーンまで、すべてがタイトにまとめあげられている。名シーンはクライヴ・オーウェンが演じる「教授」(彼の演技もピカイチである)との戦いだろう。あれほど静かでありながら残酷な場面もなかなかない。

 とはいえ、脚本に問題がないわけではない。トレッドストーン計画の全貌など、いくつか(というかほぼ全て)の謎を残したまま映画が終了するので、結構もどかしいのである。続編に乞うご期待、と言ってしまえばそれで済む話だが、やはり3部作とはいえある程度の決着は付けるべきではないだろうか(第一、「ボーン・アイデンティティー」製作時は続編の計画など無かったのだから、なおさらストーリーは収束させるべきである)。事実、最後のクライマックスは正直尻窄みである感じを拭えない。あれだけ鬼気迫るアクションを繰り広げながら、最後は下っ端とのもみ合いというのはなんとも悲しいではないか。

 しかし全体として、プロットはそつなく完成されていると言える。リアリズム溢れるスパイ物でありながら、荒唐無稽であることも忘れず、程よくロマンスで味付けをしてある。随所に登場するヨーロッパの名所や風景も、他のアメリカ製アクションとは異なる彩を映画に添えている。
 そして何より、マット・デイモンが真のハリウッドスターになった瞬間でもあるのだ。

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2014/12/28 (Sun) ベイマックス

ベイマックス


原題   Big Hero 6
公開   2014年
上映時間 102分
製作国  アメリカ

監督   ドン・ホール/クリス・ウィリアムズ
脚本   ロバート・L・ベアード/ダン・ガーソン/ジョーダン・ロバーツ

声の出演 ライアン・ポッター
     スコット・アツィット
     ダニエル・ヘニー


あらすじ
 最先端の技術が集う都市サンフランソウキョウに暮らす14歳の天才少年ヒロ。違法であるロボット格闘技に夢中になっていたヒロの身を案じた兄のタダシは、自身の通う大学にヒロを連れて行く。タダシの研究仲間やロボット工学の第一人者キャラハン教授と出会い感銘を受けたヒロは、大学で最先端の科学を学ぶことを決意。しかし、そんな矢先、不慮の事故でタダシは帰らぬ人となってしまい、ヒロは殻に閉じこもってしまう。そんな彼の前に、タダシが生前に開発したケアロボットのベイマックスが現れ、そのおかげでヒロは少しずつ元気を取り戻していく。そして、兄の死の裏に巨悪が潜んでいることに気付いたヒロは、兄のためにも戦おうと立ち上がるが……。




鑑賞日  12月26日
場所   映画館
評価   3.5点


レビュー
 ディズニーがマーベルを買収してから考えられてきた原作付きヒーロー物のアニメである。元々のビッグ・ヒーロー・シックスとは大幅に違うものになっているが、メンバーの個々の能力は原作から着想を得たものなので、それはそれで楽しめる。

 その点について語り出すとキリがないので省略するが、それはさておき、この作品はディズニーらしく「元からある素材をうまく調理して、誰もが好む『感動モノ』に収束させる」ことには成功している。ヒロとタダシという兄弟の関係、ヒロとベイマックスという人間とロボットの関係。どちらの話も中途半端さは感じられず、きちんと整理をし、それぞれの話に一定の決着はつけている。
 しかし、その「決着」のつけ方が問題なのだ。物語の序盤でタダシが亡くなってから弟のヒロは塞ぎ込むのだが、そんな彼に対してベイマックスは「タダシはここにいます」と語りかける。(これ自体がちょっとした伏線になっているのだが、)それでもヒロは「みんなはそう言うけれど」と優しさを跳ね返す。ここに今までのアニメにはない成長を感じた。子供向けのアニメで死という決別を描く際、「故人は私たちの中に生きている」という陳腐な理論を展開しがちなのにはうんざりしていたからだ。とはいえ、考え方そのものが悪いと言っているわけではなく、それを道徳の材料として使い回す点が安直であると言いたいだけである。その点、「ベイマックス」は今までとは真逆の新機軸を打ち出しているかのように思えたのだ。
 だが期待はあっさり裏切られた。結局のところ、ディズニーは観客の涙が欲しいがために「故人は私たちの中に生きている」理論を最後に使ったのだ。まるで、成長するとはこういうことだ、と押し付けるかのように。そうではない。親しい者との死別への決着のつけ方はこの理論だけじゃないはずだ。そういった新しい面を提示できなかった以上、「ベイマックス」は子供向けのアニメ止まりなのである。

 とはいえ、悪い部分ばかりではない。それどころか、アクションヒーロー物として見れば、非常に優秀なアニメ映画である。王道のチームアップを丁寧に描き、見所満載のアクションシーン(特に「仮面の男」の攻撃手段はSFXをフルに使っていて大迫力である)も満足感がある。個人的にはマーベル関連の小ネタ(キャラの出自やスタン・リーなども含め)が意外にも楽しめた。
 そして何よりもベイマックスが素晴らしい。あの爬虫類じみた人造生命体から、「思わず抱きしめたくなるような」ケアロボットに変更したのは勇気のいる決断であっただろう。そして、それは見事に成功した。彼の緩慢な動きには登場するたびにクスリと笑わされ、あえてシンプルで無感情なデザインにしたことで逆に温かみが感じられるロボットとなった。「体の動き」で笑いを取るという古典的手法の重要さを改めて提示した点でも評価されるべきであろう。

 総合して、いい意味でも悪い意味でもベイマックスありきの映画であったと言える(事実、チームの面々も個性的なのに、効果的に動かせていない印象を受けた)。それでも、この寒い冬に幸せな気分になりたければ、これほどぴったりな映画もそうそう無いだろう。

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