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2017/07/30 (Sun) カーズ

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原題    Cars
公開    2006年
上映時間  116分
製作国   アメリカ

監督    ジョン・ラセター
脚本    ダン・フォーゲルマン/ジョン・ラセター 他

声の出演  オーウェン・ウィルソン
      ポール・ニューマン
      ボニー・ハント


あらすじ
 乗り物たちが生き物として住む世界。新人レーサーのライトニング・マックィーンは「ピストン・カップ」での初優勝を狙うも、自分の独りよがりな性格が原因となり、他の2台と共に同率1位となった。後日行われる決定戦に参加するために急いでカリフォルニアへ向かうが、道中トラブルに巻き込まれ、ルート66沿いに位置するラジエーター・スプリングスに流れ着いてしまう。その町は時代の流れと共に人々から忘れられ、遂には地図からも消えてしまうような寂れた町だった。





鑑賞日   17年7月29日
鑑賞方法  Blu-ray
評価    3.5点


レビュー
 気づけばこの作品も10年以上も前の映画になっていることに驚きを隠せません。これが公開されることを知った時、「車を擬人化する」という突飛なアイデアが何とも奇妙に思えましたが、それが今ではディズニー内においても定番のキャラクターに。映画自体も続編やスピンオフが作られるほどに大きなフランチャイズになりました。

 さて現在、そのフランチャイズの足がかりとなったこの作品を改めて見ると、極めて王道と言えるストーリー構成が良くも悪くもこの作品を特徴づけていることがわかります。嫌味で友達のいない主人公が、暖かな人々(というより車々)との出会いを通じて勝利よりも大事なことを知る。いわゆるアニメにおける「定番」を崩してきたとされるピクサーにしては拍子抜けするほどシンプルなのです。

 決してこれがダメだと言いたいのではありません。むしろ生き生きとした各キャラクターの個性がよりはっきりと浮かび上がるので、各々が見せる掛け合いに思わず微笑んでしまうほどです。ギリギリ鬱陶しくないメーターや、イタリア車のルイジやグイド、ポルシェのサリーなど、皆バックグラウンドは違えど、町を愛し、非常に生き生きとした動きを見せてくれます。車になってもなお、最高に渋い演技を見せてくれるポール・ニューマンにも言及すべきでしょう。ドキュメンタリー作品を除けば、生前最後の出演作であったことを考えると、この映画の展開には胸を打たれます。

 またもう一つの主題である「時代の流れには逆らえない」という事実も、なかなかに奥の深いテーマです。近隣に高速ができたことで町に立ち寄る客がいなくなった現状を、住民の車たちは嘆きはするものの、それを決して否定するわけではありません。開発や人材の流出を単純に否定するのではなく、仕方ないものと受け止めた上でどう乗り越えていくのか。子供向けとは考えにくい「諦め」が、明るいキャラクターたちとの対比で一層際立つのです。

 しかしながらこういったピクサーならではの脚本づくりがあるにもかかわらず、本筋自体はやや冗長気味なのも事実です。舞台はほぼラジエーター・スプリングスのみで、そこで描かれることも実際のところは大筋に関係のないギャグシーンが大半。キャラを深掘りすると言えば聞こえがいいかもしれませんが、本当に示すべきテーマがその過程で薄まっていては意味が無いでしょう。
 それに関係し、レースカーが主人公にもかかわらず、レースシーンが最初と最後だけなのも何とも寂しい。今見ても遜色ないほどの迫力のあるCGで、手に汗握る展開を見せてくれるのだから、尚更そう思わされます。

 こういった脚本上の欠陥をいくつか抱えながらも、非常に丁寧な描写力と全体を彩るノスタルジアがそれらを上手くカバーしています。そして何より、10年以上経った今もこうして見ることができる以上、この映画が楽しい映画であることは認めざるを得ないのです。

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2017/07/28 (Fri) バッドボーイズ

bad_boys.jpg


原題    Bad Boys
公開    1995年
上映時間  119分
製作国   アメリカ

監督    マイケル・ベイ
脚本    マイケル・バリー/ジム・マルホランド/ダグ・リチャードソン

出演    マーティン・ローレンス
      ウィル・スミス
      ティア・レオーニ


あらすじ
 マフィアから押収した1億ドル相当のヘロインが何者かに盗まれ、麻薬課の刑事であるマーカスとマイクは捜査を命じられる。浮かれた犯人グループの一人がコールガールを呼んだことをきっかけに、一般人のジュリーは事件に巻き込まれ、2人に事件解決まで匿ってもらうことになる。





鑑賞日   17年7月28日
鑑賞方法  Netflix
評価    2点


レビュー
 CMやMVの監督として名を馳せていたマイケル・ベイによる初の長編作品です。典型的な彼の作品のイメージである爆発に次ぐ爆発や、無意味に登場するセクシーな女性など、この時から彼が何も変わっていないことを確認できて、嬉しいような悲しいような気持ちです。

 おそらく世間的にはマイケル・ベイの、というよりは主演のマーティン・ローレンスとウィル・スミスが出演する映画としてのイメージの方が強いのではないでしょうか。コメディアンだったローレンスを(コメディ要素のあるものばかりではあるが)映画俳優にし、ヒップホップの歌手であったウィル・スミスをスターにしたのですから、ある意味では映画業界に貢献しているでしょう。他にも手持ちカメラを多用したクローズアップやCM・MVから流用した当時最先端のスタイルが、90年代後半に作られた数々のアクション映画に影響を与えたのも事実です。

 ですが今現在、いざこの映画を見ると、そういった印象は全く受けません。それどころか、典型的な90年代の時代遅れの産物そのものなのです。
 まず初っ端から鼻につくのは、MTVにでも出てくるかのような色調と構図です。当時は最高にイケていたのかもしれませんが、こういった時代を象徴するものはいつしか廃れるものです。端的にいってしまえば、最高にダサい。そのわざとらしいカット割りが、いかにもブラックカルチャーを悪い意味で取り込んでいる白人的なのも最低です。

 言わずもがなですが、プロットは無いに等しいです。敵の思惑や心情など、どんなアクション映画でも提示される情報は何も無く、ただただ無意味な会話を繰り広げ、銃撃戦をしたいがために死んでいきます。おそらく銃撃戦をすることをまず始めに考え、そのあと脚本の肉付けをしていったのでしょうが、その肉付けが最悪なのです。マーカスとマイクがしばらくの間入れ替わる展開は尺を持たせるためだけに作られたことは明らかで、それ自体は面白くともなんともありません。他のキャラクターも無理やり問題を起こしているだけで、何一つ自然な流れはここには無いのです。

 もちろん「アクション映画なんだからそんなものだろう」という話もあります。しかし、そのバカらしさの中にも説得力を持たせることは非常に重要なことであり、観客には脚本上の欠陥やおかしなセリフを意識させてはいけないのです。『バッドボーイズ』はそれがまったくできておらず、中学生になりたての男子が繰り広げるような、大人には苦痛な会話劇が繰り広げられるのです。劇中、ジュリーが敵に投げかける「Do you go to college?」(字幕では「下品ね」)という言葉は、まさしくこの映画の製作陣にも聞いてみるべきでしょう。

 ここまで苦言ばかり呈してきましたが、悪い点ばかりではありません。実のところ、メインの人間の演技たちはなかなか上手なのです。
 ローレンスが出る場面は、セリフは面白くともなんとも無いにもかかわらず、不思議と笑みがこぼれ、彼がマーカスというキャラクターを上手く自分の中で解釈しているのがわかります。そこにウィル・スミスが加われば、飽きが来そうな展開にも観客はついていくことができるでしょう。スミスは主役級を演じるのがほぼ初めてにもかかわらず、非常に安定した演技を見せ、そのあと大ブレイクするのも頷けます。
 ヒロインを演じたレオーニは、突拍子も無いキャラクターを(しかも女性蔑視としか思えないミニスカートを履かされて)押し付けられたにも関わらず、不思議なことに説得力があるのです。決して名演技ではありませんが、後半に進むほど良くなっていくのには驚かされました。

 結局のところ、骨格自体が古き良き刑事ものやバディもののパクリで、今となってはアクションシーンも古びている以上、今更見る価値はないことは明白です。でも多くの量産された酷いアクション映画同様、『バッドボーイズ』にもノスタルジアを感じる人がいるのであれば、この映画がレンタルコーナーに並ぶ価値はあり続けるのです。

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2017/07/28 (Fri) デアデビル シーズン1

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原題    Marvel's Daredevil
放送    2015年
話数    13話
製作国   アメリカ

ショーランナー スティーヴン・S・デナイト
クリエイター  ドリュー・ゴダード
原作       スタン・リー/ビル・エヴェレット 『デアデビル』

出演    チャーリー・コックス
      デボラ・アン・ウォール
      エルデン・ヘンソン


あらすじ
 ニューヨークのヘルズ・キッチン出身の弁護士マット・マードックは、幼い頃事故に遭い盲目になったのと引き換えに超感覚を得た。治安が悪化するこの街で、昼は法律を手に弁護士として、夜は黒い覆面をし自らの拳で、日々悪と戦う毎日であった。しかし、彼の前に街を裏から牛耳る大物、ウィルソン・フィスクが立ちはだかる。





最終話鑑賞日 17年7月27日
鑑賞方法   Netflix
評価     3.5点


レビュー
 私は元々、映画に比べてドラマはほとんど見ることがありませんでしたが、ここ数年は以前と比べるとシーズン通して鑑賞することが多くなりました。せっかくなので、今後は1シーズン終わるたびにシーズン毎のレビューを書きたいと思います。

 早速、その一つ目はNetflixにおける、一番最初のマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の作品である『デアデビル』。原作コミックの中でも個人的なお気に入りであるクライムファイターが、連続ドラマではいかに調理されたのでしょうか。

 まず目を引くのは、映画やABCのドラマシリーズでは考えられない暴力性です。どう考えても子供向きではないその描写から、ネット配信ならではの自由度を存分に生かそうという製作陣の気概が伺えます。そもそも今回は最終話まで悪魔を模したあのコスチュームにはならず、ずっと黒装束のままという、フランク・ミラーの『マン・ウィズアウト・フィアー』の影響が存分に見て取れる時点で、そういった大人向けの表現は避けられないのですが。事実、この方向性は功を奏していて、ほぼ通常の人間と変わらないマットが痛みに耐えながら戦う様は本家映画シリーズでは絶対に見られない緊張感にあふれています。

 その戦闘シーンもまた、よく作り込まれていて見所満載です。非常にわかりやすい構図が多いため、黒装束という暗い映像では映えない服装でも、しっかりと何が起こっているか見ることができ、何よりかっこいい。目立った特殊能力がないヒーローにも関わらず、手に汗握る戦闘を繰り広げてくれるので、それがフィーチャーされるエピソードは往々にして面白いのです。

 ですが、話のペースに関してはかなり難があると言わざるを得ないでしょう。そもそもテレビで放映されることを想定していないため、各話でクライマックスを作る必要がなく、じっくりとストーリーを組み立てていくことができる点がネット配信ドラマの利点です。しかしそれがこのヒーローものでは裏目に出ているのです。
 主人公の行動原理により、話も裏表の2つが入り混じった構造になっています。まずは表向きの、フィスクとその一味によるヘルズ・キッチンを支配下に置くための土地の買収工作とそれを食い止めようとする話。そして、グレーどころか真っ黒な彼らの裏稼業の本陣に行き、手下を叩きのめすマットの話が2つ目です。通常であれば、後者の方に重点を置き、毎回黒装束で戦わせるところでしょう。当然、このドラマも序盤は見所満載の戦闘シーンのオンパレードでテンポも非常に良いのです。しかしながら、これが中盤になると前者のストーリーが中心に動いていき、一気にペースダウンしてしまいます。
 特に協力者のフォギーとカレンが絡むエピソードのダレ具合は凄まじいものがあります。同じ弁護士として活動するフォギーはコメディリリーフでもあるのでまだ良いとしても、素人のカレンが本筋に出てくると一向に話が進みません。彼女のキャラクターに腹が立つかもしれませんが、それを置いたとしても、彼女の行動により無理やり状況を悪化させるのは脚本上の都合としか思えないのです。特に終盤のエピソードの彼女の行動は納得しがたいものがあり、下手をすればデアデビル陣営を応援したくなくなっているかもしれません。

 このエピソードが進むたびに悪くなる状況をしっかりと支えてくれるのが、ヴィンセント・ドノフリオによるウィルソン・フィスク。MCUの映画シリーズで一番の問題点は大概敵にありましたが、今回はその真逆です。おそらく、MCU史上最も複雑で魅力的な敵のキャラクターに仕上がっています。彼はコンプレックスと言えるほどに愛情を欲しながら、自らの調和を乱すものには一転して過剰なほどの暴力を振るいます。絶対に打ち倒すことのできない強大な壁でありながら、その内面は脆く崩れやすいのです。彼が感情を吐露する場面は、必死に自分の弱さを押し殺そうとする彼の切実さが手に取るように伝わり、気づいたらフィスクを応援していること請け負いです。彼だけが、ネット配信で作られる恩恵を存分に受けた存在とも言えるでしょう。

 1話1話を見ていくと耐えがたいぐらいのエピソードもありますが、改めて全体を通して省みると、連続ドラマという枠組みにおいてよりドラマティックなヒーローものを提示したのは間違い無くこれが最初なのです。(ある展開を除けば)小さな登場人物含め、コミックに忠実にできている点も評価できるでしょう。そしてやはり、マットとフィスクたちが直接やりとりする場面からは目が離せないのです。
 もう一度見直すには根気がいるかもしれませんが、初めて見る分には間違い無く、MCUの新しいヒーローとしてデアデビルを迎え入れることができるでしょう。

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2017/07/28 (Fri) インターステラー

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原題    Interstellar
公開    2014年
上映時間  169分
製作国   イギリス/アメリカ

監督    クリストファー・ノーラン
脚本    ジョナサン・ノーラン/クリストファー・ノーラン

出演    マシュー・マコノヒー
      アン・ハサウェイ
      ジェシカ・チャンスティン


あらすじ
 21世紀の近未来。地球は砂漠化が進み、植物には疫病が蔓延、少しずつ人類に滅亡が忍び寄っていた。NASAのパイロットであったクーパーも、家族とともに1日を生きるので精一杯で、農業を営む日々であった。ある日、自宅に起こった異変がきっかけで、秘密裏に存続していたNASAの基地を見つけた彼は、人類の存続をかけた移住先の星を見つけるために、家族を置いて長い旅に出ることを決意する。





鑑賞日   17年7月24日
鑑賞方法  Blu-ray
評価    5点


レビュー
 IMAXの映画館で見た当時、その圧倒的な宇宙の描写に打ちのめされた。画面は小さいものの、テレビで見てもやはりそのリアルさ(もしくはリアルと思わせるほどの精巧さ)には驚かされる。そしてある意味で人間の想像力の限界とも言える筋書きこそ、この映画を不変の傑作にしていると思わされた。

 そもそもこの映画は始まりから終わりまで、極めて一貫したテーマのもと描かれている。映画の中でもクサイほど言及される言葉、「愛」だ。
 クーパーが地球を離れる瞬間、カウントダウンとともに家族との永遠の別れが差し込まれる。長い時間の間数回のみやりとりがされるビデオレターもまた、遠い距離の中繋がる一本の線として表れる。劇中描かれる人物描写の多くは、どれもこれも非常にパーソナルで、見方によっては全くもって宇宙空間で描く必要のない矮小な問題とも取ることができる。
 しかしながら劇中でも言われている通り、これだけ壮大な、まさしく人間などちっぽけな存在の一つに過ぎないと感じられるような真の発見に直面してもなお、人間はその矮小な事象に執着するのだ。おそらく監督もまた、マイケル・ケイン演ずるブランド教授と同様に、その事実を見抜いていたのだろう。ストーリー展開が命であった彼の中では、最も人間描写に厚みの出た映画であり、それこそがこの映画を一歩先に進んだものにしている。

 不思議なもので、これだけ難解で、日々の生活に関係するとは考えにくい宇宙という空間に想いを馳せる時、実際に感じるのはその雄大さではなく、自分自身が育った環境とそこに生まれついた運命についてなのだ。本当の意味で宇宙に取り憑かれた一部の人たちを除けば、多くの人がそこに行き着くはずだ。いわゆる奇跡と言われるような確率で地球が存在し、そのただ一点に自分が立っている。その事実に気付かされ、心が震わされるのである。すなわち宇宙の長い歴史の中で、当たり前に思われているこの出来事を再確認させるのがこの映画なのだ。

 あれだけの旅をした終着点があれでは、クーパーにとっても観客にとっても報われない結末に思えるかもしれない。しかし、その人間の限界を感じる時こそ、私は人間の可能性を最も感じられる瞬間であると信じて疑わないのである。

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2017/07/28 (Fri) バットマン ビギンズ

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原題    Batman Begins
公開    2005年
上映時間  140分
製作国   イギリス/アメリカ

監督    クリストファー・ノーラン
脚本    クリストファー・ノーラン/デヴィッド・S・ゴイヤー

出演    クリスチャン・ベール
      マイケル・ケイン
      リーアム・ニーソン


あらすじ
 両親を悪漢に殺されたブルース・ウェインは、故郷のゴッサムシティを出て、一人チベットの奥地で「悪と対峙すること」とは何かを知ろうとしていた。そんな折に、太古から悪を討伐するために暗躍してきた「影の同盟」の一員であるヘンリー・デュカードからスカウトを受ける。悪と戦うための様々な訓練を施されたブルースだったが、「影の同盟」の思想に疑問を感じ、結果離反する。
 ゴッサムに戻った彼は、執事のアルフレッドたちの支援を受け、今やアメリカ有数の犯罪都市と化した故郷を救うため、バットマンになることを決意する。





鑑賞日   17年7月21日
鑑賞方法  Blu-ray
評価    4点


レビュー
 私が初めて劇場で見たバットマンはこの作品でした。当時はティム・バートン版の前日談だとてっきり思っていたので、このあとさらに有名になる続編群が登場した時は喜びでいっぱいになったことを覚えています。どちらにせよ、いわゆるシリーズ物の一角には変わりないのですが、今回はそういった視点ではなく、あくまで一作品として捉えて鑑賞しました。

 初めて見た時は、「影の同盟」やラーズ・アル・グールなど、妙にアジアンチックなテイストに違和感を感じたことを覚えています。もちろん原作を知った今では当たり前のように受け入れられる事実ですが、実際のところこの「ブルース・ウェインの帰還」までのパートはあまり興味を惹かれる部分でないことは確かです。舞台がゴッサムシティに移ってからの描写に比べ、あまりにもコミック的な表現は、全体としての統一感で見た時、ぴったりと噛み合うピースではありません。リーアム・ニーソン演じるデュカードとのあまり深いとは言えない師弟関係や、渡辺謙のあまりにあっけない死など、本当に原作から引用する必要があったのか疑問に感じる点が数多くあります。これは物語の終盤に大きく関わる部分なので、そういった意味では重要かもしれませんが、あまりに適当などんでん返しなのでやはり首を傾げずにはいられないのです。

 しかし、場面がゴッサムシティに変わると、俄然物語は面白くなってきます。「ヒーローがヒーローになるまで」という、はっきり言ってしまえば、この手の映画で最もワクワクする展開が待ち受けているのだからもちろんです。バートン版『バットマン』ではその過程が描かれるわけではなかったので、この部分は『ビギンズ』ならではと言っていいでしょう。
 少しスチームパンク風のゴッサムシティは、コミックと現実の良い部分を上手いこと掻い摘んでいて「バットマン」でしか描けない世界観を堪能できること間違いなしです。またフランク・ミラーによる『イヤーワン』と、その続編を想定して描かれたジェフ・ローブ及びティム・セールによる『ロング・ハロウィーン』をかなり明確に意識して描かれており、ノワール調でありながらもリアルなヒーロー像を提示しています。正直な話この2つと同様、素直にマフィアをメインの敵にすれば良かったのではないかとも思ってしまうのです。それほどに、原作に最も近いバットマンがこの映画にはいると感じています。

 各キャラクターについては、良し悪し両面があります。クリスチャン・ベールによるバットマンは、散々言われていることですが、やや大げさな感じも受けます。ところどころ変にコミカルなこの映画を体現する存在とも言えるでしょうか。ブルースでいる時は、自らの真のアイデンティティを近しい人間にも隠さなければいけない苦悩などが見え、なかなか奥深いキャラクターですが、これが仮面をかぶった途端、わざとらしい声色に加え「I'm batman.」というセリフの連発。コミックではおかしくなくても、実写にすると滑稽になってしまうことにはどこかで気づくべきでしょう。
 アルフレッドは、あくまで影から支える存在という原作での立ち位置よりも、頼りになりすぎている気がしますが、ブルースの内面の成長がフィーチャーされている今作では安心できる存在でもあります。ゲイリー・オールドマンの少しコミカルなゴードンも、重苦しくなりがちなノーラン作品の清涼剤になっています。その他の協力者たちも、多少大げさなところはあるものの、総じて丁寧に演じられていて好感の持てる人物ばかりです。

 前述の内容にも関係してきますが、敵についてはもう一声といった所でしょう。キリアン・マーフィーによるスケアクロウは、原作でもファンの多い存在であり、神経質さと冷酷さが相まった演技は今作では出色のものです。だからこそあっさりと退場してしまうのにはかなり残念です。そのあと、ただのチンピラと化す彼の運命を考えると、宝の持ち腐れにしか思えません。
 リーアム・ニーソンの威厳ある立ち居振る舞いは悪くないものの、「影の同盟」の陳腐な目標とは馴染めていません。やはり空想の世界と現実の融合の難しさはここでも感じられます。

 他にも大仰しいタンブラー(バットモービル)やわかりづらい戦闘シーンなど、問題点は多くあります。しかしながら、そういった多くの問題点の多くは非常に些細なもので、やはりバットマンが登場し、暗闇の中敵を引きずり込み倒す瞬間は興奮せずに入られないものです。下手なCGに頼りすぎないという監督の選択も、展開に重厚感を与える上で一役買っています。
 総合して、バットマンの誕生譚として見た場合、この映画のプロットは間違いなく見事と言えます。長い歴史の中で積み重ねられた「バットマン」という一つのヒーロー像を丁寧に紐解き、再構築した結果できあがったノーラン版「バットマン」がヒーロー映画のみならず、多くの映画や原作にも影響を及ぼした点は至極納得のいくものなのです。初めて「バットマン」に触れる人にはもちろん、大人にこそ見て欲しいヒーロー映画は、まさしくこの映画が正真正銘の元祖なのではないでしょうか。

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